備中地域は、歴史ある酒蔵が数多く集まる酒処さけどころです。

関東出身の私は、倉敷へ移住してから備中の地酒と出会い、備中地域が酒処ということも移住後に初めて知りました。
備中の地酒は種類が豊富で飽きることがなく、新しい出会いが尽きません。

そのような個性豊かな酒蔵が集結する「宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!」というイベントが、6月8日(土)・9日(日)の2日間開催されます。2024年で4回目の開催となる人気イベントです。

日本酒好きにとってたまらないイベントの内容を取材してきました。

「宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!」とは

画像提供:宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会
画像提供:宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会

宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!は、2024年6月8日(土)・9日(日)に開催されるイベントです。

備中地域の酒蔵15軒、地ビール醸造所2軒の計17軒が集まり、作り手のかたが直接地酒を提供してくれます。1杯数百円程度でさまざまな地酒を飲み、気に入ったものがあれば瓶で購入することも可能です。
また各酒蔵や地ビール醸造所にゆかりのある地元の飲食店が集い、備中地域の食を堪能できます

お酒がメインのイベントではありますが、スイーツやコーヒー、酒器の販売や、生演奏のステージも披露されるため、前回は子ども連れの家族の参加も多かったそうです。お酒が飲めない人でも楽しめるので、例年多くのかたが足を運んでいます。

詳しい出店は以下の画像をチェックしてください。

画像提供:宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会
画像提供:宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会

イベントを企画したのは、倉敷で居酒屋を営む中原和雄なかはら かずおさん。中原さんは宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会で代表を務めています。

中原さんは、お店に訪れるお客さんや仕入れ先の蔵元さんと話すなかで、「岡山の人は地元のお酒をほとんど飲まない」という事実にもったいなさを感じていました。地酒のおいしさやその魅力を地元の人に知ってもらうべく、「飲んでもらう。知ってもらう」をテーマにした、宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!が誕生したと言います。

第4回を迎える今回のイベントについて、中原さんにお話を聞きました。

主催者インタビュー

宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会 代表 中原和雄(なかはら かずお)さん
宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!実行委員会 代表 中原和雄(なかはら かずお)さん

──宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!が生まれたきっかけを教えてください?

中原(敬称略)──

岡山の人に地元のお酒を飲んでもらいたい。地酒の魅力を知ってもらいたい」と思ったのが最初のきっかけでした。

岡山県は、全国で8番目の酒蔵の数を持つ酒処とも言える地域なんですが、地元の人って案外地酒を飲まないんです

自分のお店に来るお客さんや酒蔵さんといろいろ話していても、やはり地元の人が地酒を飲む機会ってあまりないみたいで、調べてみたら岡山県内で消費される日本酒のうち、県産酒は全体の2割しかありませんでした。

前回(第3回)の会場のようす 画像提供:中原和雄さん
前回(第3回)の会場のようす 画像提供:中原和雄さん

地元でこんなにおいしいお酒が造られているのに、地元の人が飲んでいないのはすごくもったいない!と思い、備中の酒蔵さんを集めた「宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!」を企画したのが始まりです。

地元のお酒のおいしさを知る機会になれば良いなと思います。

あと岡山県は、一級河川が3本も流れていて、日本酒造りには欠かせない雄町米・山田錦などの酒米の生産量も日本でトップクラスなので、酒づくりの気候風土がそろっているんです。
さらに、酒づくりの職人である杜氏(とうじ)は「備中杜氏」と呼ばれ、日本で2番目に古い歴史を持っています。

水どころ、米どころ、杜氏どころ……まさに岡山は酒処なんですが、そのことを知らない人も多いと思います。今回のイベントで岡山が酒処なんだってことを、知ってもらいたいです。

──備中の地酒の特徴について教えてください。

中原──

備中地域というのは、岡山県のなかでも縦に長く位置している地域で、県南と県北でまったく違う気候風土を持っています。

日本酒はその土地の気候に合わせて作られるので、同じ備中地域の日本酒でも、北にある酒蔵と南にある酒蔵で味がまったく変わるんです。県北のほうだとシュッとした味わいになりますし、県南のほうでは少し濃い目の味わいになっていると思います。

備中地域のなかでも、さまざまな味わいの日本酒が作られるのは、ひとつの大きな特徴ですね。

山成酒造 画像提供:中原和雄さん
山成酒造 画像提供:中原和雄さん

──今回のイベントの見どころはなんですか?

中原──

岡山県にある酒蔵の半数が備中地域に集中しているのですが、今回のイベントは備中地域のほとんどの酒蔵さんが参加してくれました。備中の酒蔵が一か所にこれだけ集まるイベントは、他にはないと思います。
蔵元さんが直接お酒の説明もしてくれるので、たくさん話しながら地酒を楽しんでもらって、新しい地酒と出会ってほしいです。

三冠酒造 画像提供:中原和雄さん
三冠酒造 画像提供:中原和雄さん

各酒蔵の地域にゆかりのある飲食店も、おいしいおつまみを販売しているので、ぜひ地酒との組み合わせも楽しんでみてください。

地元の人気飲食店のおつまみ 画像提供:中原和雄さん
地元の人気飲食店のおつまみ 画像提供:中原和雄さん

あとは、スイーツやコーヒー、市民楽団のかたの生演奏、倉敷芸術科学大学の学生さんが作った酒器の販売などもおこないます。地酒イベントですがいろいろな楽しみ方ができると思うので、ぜひ飲まないかたにも足を運んでいただきたいです。

倉敷芸術科学大学の学生が制作した酒器 画像提供:中原和雄さん
倉敷芸術科学大学の学生が制作した酒器 画像提供:中原和雄さん

──前回の反響はいかがでしたか?

中原──

前回は5,200人以上のかたに来ていただき、想像以上の来場者数に驚きました。多くの人に楽しんでいただけたと思います。

直接お客さんの声を聞く機会がなかなかない蔵元さんも喜んでくれましたね。
たとえば各酒蔵でおこなわれる蔵開き(くらびらき)など、蔵元さんが一般のお客さんと会える機会は他にもあると思いますが、ゆっくり話せることってあんまりないと思うんです。

今回のようなイベントだと、蔵元さんも自分たちのお酒をお客さんにしっかりと説明できるので、イベントのメインテーマである「飲んでもらう。知ってもらう」がしっかりと実現できているんじゃないかと思います。

白菊酒造 画像提供:中原和雄さん
白菊酒造 画像提供:中原和雄さん

あとは、子ども連れで参加されるお客さんもよく見かけました
3世代で来てくれたかたもいましたね。おじいちゃんは息子や娘に「ここのお酒はおいしいんだよ」と話していたり、孫は孫で会場を走り回って楽しんでいたり、演奏される音楽に合わせて踊っていたり……。

演奏してくれた楽団のかたからも、「普段屋外で演奏する機会がないので楽しかった」と言ってもらえました。

多くの人に楽しんでもらえるイベントを目指しているので、そのような感想を聞けると開催して良かったと思います。

ご機嫌なお子さん 画像提供:中原和雄さん
ご機嫌なお子さん 画像提供:中原和雄さん

──どのような人に来てもらいたいですか?

中原──

まずは、地酒をあまり飲んだことがない人にぜひ来てもらって、岡山は酒処っていうのを知ってもらいたいですね。

特に地元のかたには地酒を飲んでもらいたくて、地元にこんなにおいしいお酒があるんだ!という新しい発見があったら良いなと思います
自分の住む地域でどのようなお酒が造られているのかを知っておくと、県外に行ったときに、地酒を通じて地元の魅力を伝えられますし、「おいしいね」と褒められたときもうれしいと思うんですよ。

あとはお酒が飲めない人でも気軽に参加してほしいです。

みんなで楽しむことが一番なので、ご飯だけ、音楽だけ、スイーツだけ、というかたでも大丈夫!どの年代の人も楽しんでもらえたらと思います。

画像提供:中原和雄さん
画像提供:中原和雄さん

──最後に、読者のかたにメッセージをお願いします。

中原──

岡山は全国に誇る酒処です。そして今回のイベントでは、県内の半数にあたる酒蔵さんが参加します。

備中の地酒を飲んだことあるかたも、よく知らないかたも、ぜひこの機会に作り手である蔵元さんたちとお話しながら、楽しんで飲んでみてください。

また地酒だけでなく、フードやスイーツ、素敵な音楽もあります。今回は2日目に阿波おどりのかたも来てくれます。
とにかく笑って食べて楽しく飲む。みんなでわいわい盛り上がりましょう!

レッツ 宴joy(エンジョイ)

おわりに

お酒のイベントとなると、私はどうしても一緒に飲める人を誘ってしまいがちです。

しかし宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!は、バリエーション豊かな出店のおかげで、お酒が飲めない人でも楽しめそうなので、いろいろな人に声を掛けやすいイベントだと感じました。

北と南に位置する酒蔵の地酒を飲み比べし、地域による味の違いを見つけるのも面白いかもしれません。良い機会なのでいろいろな酒蔵の地酒を巡ってみたいと思いました。

さまざまな楽しみ方ができる宴joy備中地酒フェスSAKEべ!!、身近な人と一緒に、新たな地酒との出会いを探してみるのはいかがでしょうか。

著者:岩佐りつ子