日本では高い人気を誇る「軽自動車」ですが、なぜ多くのモデルが海外進出しないのでしょうか。

「軽自動車」そのまま海外展開しない理由とは?

 日本独自の自動車規格である「軽自動車」は、その大半のモデルがコンパクトながらも居住性が高く、走行性能・燃費効率の良いエンジンを搭載しています。
 
 最近では海外でも軽トラックをはじめとしたモデルが高く評価されており、動画配信サービスやSNSなどでも軽自動車の魅力を紹介している海外ユーザーもいます。
 
 しかし、日本メーカーが正式に軽自動車を「そのままの形態」で海外展開している例はほとんどありません。一体なぜなのでしょうか。

 軽自動車は、もはや日本の社会にとっては“あって当たり前”の存在です。

「一般社団法人 全国軽自動車協会連合会」によると、国内の全自動車保有台数のうち“約4割”が軽自動車とのこと。それだけ自動車ユーザーに高く支持されているということでしょう。

 さらに海外の自動車関係者からも、日本の軽自動車は「コンパクトなのに性能が高く乗り心地がいい」と高く評価されています。

 しかし高い評価を受けているにもかかわらず、日本の軽自動車が海外に進出する例は非常にまれ。

 欧米のカーマニアが輸入し、カスタマイズして楽しんでいるものの、それはあくまで一部だけの話です。

 最近では軽トラックがアメリカで人気と各所で報じられていますが、それもメーカーが正式に販売している訳ではありません。

 例えば、ダイハツ「コペン」やスズキの「ジムニー(シエラ)」のように、ボディサイズや搭載しているエンジンを変更した「現地仕様モデル」が販売されているケースはありますが、日本の「軽自動車規格」そのままで販売されたという話は数えるほどしかありません。

 一体なぜ日本の軽自動車が大手を振って海外進出しないのか、その理由を自動車メーカーの関係者に聞いたところ、以下の回答がありました。

「海外では、日本の軽自動車規格そのままだと売るのが難しいためでしょう。日本の軽自動車は、あくまで日本で販売することを想定して設計されています。つまりそのままでは、輸出先の国の規格に適合しないため、海外展開が難しいのです」

 また、これを解決するべく販売する国それぞれに合わせて再設計するのは、コスト面でも難しく現実的ではないとのこと。

 さらに、仮に適合するように再設計したとしても、売れるかどうかはまた別の話です。そして採算が取れない可能性が高ければ、もはや海外展開をする理由がありません。

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 過去にはスズキが「アルト」をできる限り日本の軽規格そのままで海外展開したというケースもありましたが、軽自動車が海外展開されたごく限られた事例のひとつとなっています。

 日本では自動車シェアの4割を占める軽自動車ですが、日本独自の規格のため海外展開には幾つものハードルがあるうえ、その国の「クルマ文化」に合わない可能性も考慮し、メーカーとしては「わざわざ危ない橋を渡る必要はない」ということのようです。