長野県中野市で散歩中の住民女性2人が刺殺された上、駆け付けた中野署地域課の男性警察官2人が猟銃などで殺害された事件は、25日で発生から1年となる。農業青木政憲被告(32)が鑑定留置を経て昨年11月、殺人罪などで起訴されたが、初公判の見通しは立っていない。

 「心のどこかに引っかかっている」。5月中旬、現場近くに住む男性(79)が事件を振り返り「みんな忘れたようで忘れていない」と話した。男性は「被告は内向的な性格。あいさつをしても返事がなかった」と語る。青木被告が立てこもった自宅の前に半年以上張られたままだった規制線はようやく撤去され、女性が倒れていた場所の近くには、新たに観音像が置かれていた。

 接見を続ける弁護人によると、1年が経過しても、被告から事件に関する言及や被害者に対する謝罪の言葉はなく、様子は特に変わらないという。公判前整理手続きが始まるまで長期化が予想される。弁護側は精神鑑定の請求も検討しており、刑事責任能力の有無や程度が争点になるとみている。