【ハノイ共同】ベトナム戦争で米軍が散布した枯れ葉剤の影響とみられる結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」のグエン・ドクさん(43)の人生を描いた長編ドキュメンタリー映画「ドクちゃん―フジとサクラにつなぐ愛―」が5月3日から日本各地で公開される。ドクさんは取材に「戦争犠牲者の暮らしを知り、平和について考えて」と訴えた。

 下半身がつながった状態で生まれたドクさんらは1988年、日本の支援で分離手術を受けた。ただ兄ベトさんは2007年に死亡、弟のドクさんは10回超の手術を経て、腎臓疾患も抱えており「いつまで生きられるか分からない」と話した。

 ドクさんの生活は今も厳しい。生後間もなくから病院暮らしで両親の愛を知らずに育った葛藤を抱え、足が1本しかないことへのストレスがつきまとう。妻や双子の子どもらと暮らす家計も綱渡りだと吐露した。戦争被害者の多くが同様の困難を抱える。

 前向きに生きようと思えたのはベトさんの存在が大きい。「一つしかない臓器を譲ってくれた。2人分、人生を楽しまないと」