ビジネスシーンにおいて、よく見聞きする「ご了承ください」という言葉。一見、丁寧で使いやすいフレーズに思えますが、使い方を間違えると失礼にあたる場合もあるので注意が必要です。
この記事では、「ご了承ください」の意味や利用シーン、使い方を例文とともに紹介します。使う際の注意点や便利な言い換え表現についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

「ご了承ください」とは

はじめに、基礎知識として「ご了承ください」の意味や利用シーンなどを確認しておきましょう。

「ご了承ください」の意味

「ご了承ください」とは、特定の事柄について相手から了承や理解、許可を得るために使われる表現です。
「了承」という言葉には、「事情を汲んで納得すること」「事情を汲んで承知すること」「飲み込むこと」「承諾」といった意味があります。この「了承」に、敬意を表す接頭語の「ご」、要望・懇願する意を表す丁寧語の「ください(下さい)」を組み合わせることで、より丁寧なフレーズである「ご了承ください」が形成されます。
これは、相手に対して選択肢を与えるわけではなく、 「こちらの事情や提示要件を理解・納得してほしい」 という意味合いで使用される言葉であることを理解しておきましょう。

「ご了承ください」の利用シーン

ビジネスシーンにおいて「ご了承ください」は口語だけではなく、 メールやビジネス文書などでもよく使われます。
例えば以下のような場面が挙げられます。

  • (顧客に対して)方針や既に決まったことの受け入れを求める場合
  • (取引先に対して)不便や不都合が生じた場合に理解を求める場合
  • (部下に対して)事前に相手の理解や承諾を求めたい場合

「ご了承ください」を使用することで、相手に対する丁寧な配慮を示すことができ、円滑なコミュニケーションを実現できます。
ただし、頻繁に「ご了承ください」を使用すると、自分の意見や決定を一方的に押し付けているような印象を与えかねません。多用は避け、状況に応じて適切な表現を選ぶことが大切です。

「ご了承ください」を用いた例文

ここからは、ビジネスシーンで「ご了承ください」を用いた具体例を紹介します。
適切な使用シーンや表現方法を理解することで、相手に対する配慮や敬意を示すことができます。以下の例文を参考に、「ご了承ください」の使い方をマスターしましょう。

あらかじめご了承ください

「あらかじめご了承ください」は、事前に相手の理解や承諾を得ておきたい場合に使用される表現です。主に、これから起こり得る事態や、決定事項についての説明を行う際に用いられます。

  • 記載されている内容は、予告なく変更する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当日までにホームページでご案内させて頂きますので、あらかじめご了承ください。
  • 会場内にはお手洗いのご用意がございませんので、あらかじめご了承ください。

ご了承くださいませ

「ご了承くださいませ」とすることで、より丁寧で柔らかい印象を与えることができます。ただ、一方的なニュアンスも含まれるため「ルールとしてこうなっている」といったマニュアル的な接客で使われることが多いです。

  • 本日は店舗の設備点検のため、17時までの営業となりますのでご了承くださいませ。
  • 原則として返品・交換はお受けできませんのでご了承くださいませ。
  • 急な変更となり申し訳ございませんが、ご了承くださいませ。

ご了承くださいますようお願い申し上げます

「ご了承ください」に「お願い申し上げます」と付け加えることで、こちらの希望を示しながらも相手に対する配慮が感じられる表現になります。相手に多少の負担や不便をかける可能性がある場合など、謙虚な姿勢を伝える際に用いられます。

  • 誠に勝手ながら下記日程を夏季休業とさせていただいておりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
  • 会場の都合により、開催日時を変更せざるを得ない状況となりました。ご了承くださいますようお願い申し上げます。
  • 電話でのお問い合わせ対応に通常より時間がかかる場合がございます。ご了承くださいますようお願い申し上げます。

そのほかの使用例

そのほか、「ご了承ください」を用いた使用例は以下のとおりです。

  • 日程を変更して執り行うこととなりましたので、どうぞご了承ください。
  • 皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。
  • 本日は休業日をいただいておりますので、宜しくご了承ください。

「ご了承ください」を使用する際の注意点

ビジネスシーンにおいて「ご了承ください」は、なんらかの“断り”を入れる際に便利なフレーズですが、誤った使い方をすると、相手に不快感を与えたり、誤解を招いたりする可能性があるので注意が必要です。
以下では、「ご了承ください」を用いる際の正しい使い方や注意点を解説します。

目上の人に使うのは失礼にあたる

そもそも「了承」は、目上の人が目下の人に対して使う言葉とされています。「ご了承ください」は相手に選択肢を与えるわけではなく、「受け入れてください」という意味があるので、目上の人に使う言葉としてはあまり適切とはいえません。
目上の人へお願いする立場で「了承」を使う場合には、「ご了承いただけますと幸いです」「何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます」など、クッション言葉や言い換え表現を活用することで敬意を示す丁寧な言い回しになるのでおすすめです。

「ご了承いただけますでしょうか」に注意する

間違えやすい表現として、「ご了承いただけますでしょうか」が挙げられます。これは、「ます」と「です」が重複する二重敬語であるため、正しい表現ではありません。
この場合は「ご了承いただけますか」が正しい表現となります。二重敬語は冗長感が生じる原因となり、相手に不自然な印象を与えてしまうため、使い方には気をつけましょう。

「ご了承ください」の多用は避ける

「ご了承ください」を安易に使いすぎると、本来の意味である「理解や承諾を求める」という気持ちが伝わりにくくなります。一方的な通知や指示という印象を与え、相手の意見や立場を尊重していないと受け取られる可能性もあるので注意が必要です。
状況に応じて、「ご確認ください」「ご対応いただけますでしょうか」など、ほかの表現を使い分け、相手の立場や状況に配慮することが重要です。

「ご了承ください」の言い換え表現・類語

最後に、ビジネスシーンで使える「ご了承ください」の言い換え表現や類語について、例文とともに紹介します。

ご容赦ください

「容赦」とは「許す、大目に見る」ことを意味します。「ご容赦ください」は、こちらに不手際や失礼があった際に、相手に対して許しを請うときに使われる言葉です。「ご了承ください」よりも、より深く相手に謝罪する気持ちが込められています。

  • 今後はこのようなことがないよう十分に注意いたします。何卒ご容赦ください。
  • 最短納期で進めていますので、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

ご理解ください

「ご理解ください」は、相手に状況や事情を理解し、納得していただくよう求める表現です。すでに起きたことや現在進行していることについて理解を求める際に使われることが多いです。

  • 新システム導入に伴い、操作方法が変更となりましたのでご理解ください。
  • 大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解くださいませ。

ご承知おきください

「ご承知おきください」は、相手に物事を知っておいてもらいたい、認識しておいてもらいたいという意味を表す言葉です。「承知」は謙譲語としての意味合いが強いため、目上の人に使う場合には、文頭に「どうぞ」をつけたり、最後に「ませ」を添えたりと表現を工夫しましょう。

  • 来月より経費精算の方法が変更となりますこと、ご承知おきください。
  • 本日の会議ではひとりずつ発言してもらいます。あらかじめご承知おきください。

まとめ

ここまでで、「ご了承ください」の使い方や注意点、言い換え表現などを紹介しました。
ビジネスシーンにおけるメールや手紙、電話などで「ご了承ください」と一言添えるだけで、相手への配慮や理解を求める姿勢を示すことができます。円滑なコミュニケーションを図るためにも、状況に応じて適切な表現を使い分けられるよう準備しておきましょう。

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