生成AIが当たり前に使われるようになっている今、AIとうまくつき合い、活用していくには何が必要なのでしょうか?

Slack AIのローンチにあわせて開催されたイベント「Slack AI Day」内で行なわれた、東北大学名誉教授 原山優子さんの講演「AIと賢く付き合うには?」では、これからの時代に人としてどのようにAIと向き合っていくべきかが語られました。

AIとの向き合い方を見直そう

生成AIの登場以前にも、さまざまな技術が世の中に登場して浸透してきました。

その中では予期せぬ問題も発生し、それに対応しながらゆっくりと浸透していくのが従来の流れでした。

東北大学名誉教授 原山優子さん「AIと賢く付き合うには?」講演資料

一方で生成AIは、これまでにないスピードで世界的に広がっています。人にとっての相棒のような存在であると同時に寄り添う相手になりつつあり、さらに依存する相手にもなりうると原山さんは話します。

今日、私が問いかけたいのは「皆さんは人としてどの立ち位置でAIと向き合っていますか?」ということです。

寄り添ってくれる便利な存在に流されてしまうのではなく、あくまでも人として自分の意思で行動して意思決定しているという“ヒューマンエージェンシー”を担保することが重要です。

AIの便利さを享受しながら、同時に主体的に活動しているかを自問自答していくことが求められているといいます。

より本質にせまる議論が必要

AIが世の中に浸透していくなかで、新たな課題も生まれています。

すでに議論されているデジタル空間での安全性の担保や、人の仕事が代替されてしまうことや個人の行動がAIに制御されてしまうことへのリスク、兵器などの破壊的なパワーをもったAIの登場に対する懸念などに加え、より踏み込んだ議論も必要になるとのこと。

大人になってから生成AIに触れた私たちと違い、これからの子どもたちは、最初から相棒のようなAIが存在する世界で育っていくことになります。

それが自己の形成や価値観にどう影響するかも考えるべきです。

東北大学名誉教授 原山優子さん講演資料

そしてそれは、従来の社会で培われてきた価値観が本当にこれでよいのかということへの問いでもあり、本質的なテーマとして議論していくことが必要だといいます。

人としての主体性を鍛えることが大切

では、そのような状況のなかで、私たちはどうAIと向き合っていけばいいのでしょうか?

個人のユーザーとしては、実際に試しながら自分に合った使い方を見つけること、そして100%頼り切るのではなく、ほどほどの加減で使うことが重要だと原山さんはいいます。

東北大学名誉教授 原山優子さん
Photo: 酒井麻里子

同時に、便利さに流されないためには、ときには意図的にオフラインの状況を作り、自分がどう生活できるかをチェックすることも大切とのこと。

人間がAIを試すのではなく、AIによって人間が試されるようになっています。人としての分析力や判断力、発想力をAIと照らし合わせることで確認し、AIの上をいくことができているかを確認し原山優子さんましょう。そしてそのためには、主体性を鍛え、AIを使いながら行動規範を作っていくことが重要になります。それがAIと賢くつき合うためのはじめの一歩だと思っています。