プロ注目の知徳高校・小船翼投手

 間近に迫った、夏の全国高校野球選手権・静岡大会。まずは県内の注目選手をご紹介! 静岡高校の谷脇健心投手。過去43度、甲子園出場を果たしている県内屈指の強豪のエース。プロからも注目されています。

 続いては、東海大静岡翔洋の岸川(きしかわ)和広選手。惜しくも涙を飲んだ、昨夏の決勝にはスタメンで出場。今年はキャプテンとして、チームを引っ張ります。

 そして、今回、注目するのは…こちらの選手! 静岡県長泉町にある、知徳高校3年の小船翼投手です。198センチの長身から繰り出されるストレートは、最速152キロ。

知徳高校 初鹿監督:
「すごい勉強熱心なんですよ。よく自分のことを知っている。指導とかしたことない。」

知徳高校3年 小船翼投手:
「プロ野球選手になることが、今年の1番の目標で、それと同時に、甲子園に行く事も目標です」

 夏の全国高校野球選手権・静岡大会を間近に控え、小船投手にはさらにもう1つ、目標が…

知徳高校3年 小船翼投手:
「夏までに最低でも155以上で、目標的には158キロ投げられるようにしたい。」

 押しも押されもせぬ知徳のエース。しかし、中学時代はチームで4番手のピッチャー?

 プロのスカウトも大注目の、知徳高校・小船翼投手。取材を通して見えてきたのは、その飽くなき向上心でした。

笹村朱里アナウンサー:
「長泉町にある、知徳高校に来ています。あちらに、小船選手がいるんですが、一段と大きいですね。」

笹村:「早速来て頂いたんですけど…やはり大きいですね!身長は?」
小船投手:「今、198センチです。」
笹村:「198センチ!」

 笹村アナウンサーの身長は168センチ。女性としては大きい方だと思うんですが、並んでみると…ご覧の通りの身長差。そして靴のサイズは…32センチ。手の大きさも…ごらんの通り。

 野球部の練習はほぼ毎日。授業が終わった後、午後4時にはじまり、8時か9時頃まで続きます。

 この日はフィジカルトレーニングが中心。知徳高校野球部では、プロのアスリートも担当する専門家を、外部から招いています。

笹村:「今日はどういうトレーニング?」
小船投手:「上半身メインでやって、後は、下半身のスクワットをやったり…」

 こちらは、肩を鍛えるためのウェイトトレーニング。26キロあるダンベルを持ち上げる動作を繰り返します。こちらは、肩のインナーマッスルを鍛えるトレーニング。高1の冬から本格的にウェイトトレーニングを始めた小船投手。バーベルや、ダンベルを使ったウェイトトレーニングを、週3日行います。

小船選手:
Q ウェイトトレーニングに力を入れる理由は
「力を出すのに必要ですし、上半身のトレーニングは、上半身は下半身より筋肉が少ないので、弱いところでもありますし。」

徳田晴宣アスレテイックトレーナー:
Q ウェイトトレーニングの目的は
「ピッチングに必要な体の使い方、身長も大きいし、腕の長さもすごく長いので、その分、肩肘に負担はかかりやすいので、その負担をなるべく少なくできるように(トレーニング)。」

 練習を終えた小船投手は、寮へ。知徳高校野球部の生徒のうち半数以上が寮生活です。いったいどんな暮らしぶりなんでしょうか?

中学時代はチームで4番手のピッチャー

 選手たちは寮に戻るとすぐ夕食。ご飯が足りなくなることも、しばしばだとか。

笹村:「どういう食べ物が好きですか?」
小船投手:「自分は、ラーメンが好きです。どら焼きですね。」
笹村:「甘いもの好きなんですね?」
小船投手:「好きです。」
笹村:「意外」

笹村:「好きな芸能人とかいるんですか?」
小船投手:「オレは浜辺美波さん。」
笹村:「可愛いですよね。」

小船投手:「ちなみに穂坂は誰が好きなの?」
穂坂選手:「えっ、いいですか?」
チームメイト:「(小声で)笹村さん笹村さん…」
穂坂選手:「あっ、笹村さんです。ずっとファンで…」
笹村:「ホントに?私、圧で言わせたかんじになっちゃってません?」

笹村:「小船選手はどうですか?」
後輩:「とても憧れてる先輩です。」

チームメイト:「翼は、日常生活はマイペースで、ゆったりしてるんですけど、野球になったらスイッチ入ってやってくれる存在なので、頼もしいですね。」
笹村:「普段、マイペースなんですね?」
チームメイト:「マイペースです」「守ってて、背中がでかい、身長もでかいけど」「頼もしいね。」

 出生時の体重は4692㌘と、生まれた時からビッグサイズだった小船投手。6つ上のお兄さんの影響で、5才の頃、野球を始めました。

 小船投手は、その後も順調に成長し、小学校で170センチ、中学を卒業する頃には190センチに。ただ、その頃から今のように注目されていたわけではなかったんです。

小船投手:「中学生の頃はあまり試合に出てなかったので…あの時は(チームで)4番手くらい(のピッチャー)ですね。」

 プロのスカウトからも注目される小船投手ですが、中学時代は、チームで4番手のピッチャー。しかし、その心が折れることはありませんでした。

小船投手:「(中学時代の)監督から、『まだ体もできてないし、まだ伸びるところはたくさんあるから、あきらめず頑張りなさい。』みたいな風に言われた覚えはあります。

 そして、兄が通っていたことが決め手となり、知徳高校に入学。入学した頃は、大きな体以外、特に目立つ存在ではありませんでした。しかし…

初鹿監督:「入学して(小船投手が)やり始めたら、(当時は)130キロ出てなかったですね。最初の頃、ストライク入らなくて、相手チームにも迷惑かけちゃって。1イニングで7点くらい取られちゃって…もう全然ダメだなって。」

初鹿監督:「1年秋の県大会の初戦、先発させたんですね。そしたら、無四球で完封しました。急に8月の後半くらいから良くなり始めて…。そしたらあれよあれよと、ベスト4までいっちゃって。なんとなく、バランスが整ったのかなと。投げ方というか、自分なりにしっくりくる投げ方になったんじゃないですかね。」

小船投手:「(1年秋の県大会)川根高校戦から、その時が初めての完封勝利だったんですけど、その時くらいから、アウトコースの真っ直ぐが決まりだしてきて…」

小船投手は寮生活

球速にこだわりたい

 きっかけをつかんだ小船投手は、以後急成長。当時、135キロ前後だったストレートは、ウェイトトレーニングを始めたことも相まって、2年の春に142キロ、夏には146キロ、そして秋には150キロを記録するなど、みるみるその球速を上げていきました。

小船投手:「夏までに最低でも155以上で、目標的には158キロ投げられるように。」

 小船投手が、球速を上げるために取り組んでいるのは、ウェイトトレーニングだけではありません。メディシンボールと呼ばれる、5㎏もある重いボールを使い、ボールへの力の伝え方を学ぶトレーニング。

 また、投球フォームにも、意識するポイントがあるといいます。

小船投手:「足を上げた時に、腕をおろす。自分のリズムも取りやすくなりますし、腕の振りも大きく使える。胸を、すぐホームに向けない。最初から(胸を)開いていくと、リリースの時には、回転しきったところなので、腕の力しか使えない。」

 プロの投球フォームを研究することも欠かしません。

小船投手:「大谷翔平選手だったり、佐々木朗希選手だったり、参考にしているのは、だいたい体の大きい選手ではありますね。」

 でも、どうしてそこまで球速を上げることにこだわるのでしょう?

小船投手:「身長がある分、球速を出せるとは思うので、こだわりたい。」

 小船投手は、球速を追求することが、身長198センチという、その恵まれた体を活かす、最善の方法だと考えたんです。

 最初の取材から2週間。知徳高校のブルペンには小船投手の姿が…

笹村:「現在、実戦形式の練習を行っているんですが、小船選手がマウンドに上がりました!」

笹村:「何割くらいの力で今日は投げましたか?」
小船投手:「8割近くくらいで投げました(監督に)球もいい』って言われましたし、いいかんじに仕上がってると思います。」

 そして、16日、全国制覇の経験もある強豪・埼玉の花咲徳栄と、練習試合を行いました。

 しかし、初回にいきなり3点を失うなど、リズムに乗れず。加えてこの日は、制球も定まりません。結局、4回を投げ6失点。チームも2−11と大差をつけられ敗戦となったものの、強豪相手に貴重な経験を積むことができました。

笹村:「どうして甲子園に行きたい?」
小船投手:「もっと高校で野球したいっていう、長く野球をしたいっていう、気持ちが強いのと、初鹿先生であったり、まわりの人を甲子園に連れて行ってあげたいです。」

球速158キロが目標