言動が何かと物議を醸す麻生太郎氏。日本の宰相も務めたこの人物は、自民党や政治家のさまざまな問題で名前が上がることがあっても、最終的には難を逃れ、政府や党の要職の座に就き続けてきました。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、そんな麻生氏の差別発言に対して、亡くなった野中広務氏が「絶対に許さん」と激怒していたエピソードを紹介。問題発言に対して部落解放同盟が抗議さえしなかったために、麻生氏が“生き残った”と指摘しています。

統一教会仲間のトランプと麻生太郎

安倍晋三、麻生太郎、甘利明は3Aと言われた。それをスリーAではなくスリーアホだと指摘したのは亀井静香である。

安倍が亡くなった後も、残った2Aはとんでもないことばかりしている。経済安保という名の監視統制法の成立に高市早苗と共に躍起になっている甘利だけでなく、麻生はわざわざアメリカに行ってトランプをヨイショしてきた。

この2人は統一教会仲間である。今度出した拙著『統一教会と創価学会』(旬報社)でも指摘したように、トランプと統一教会は切っても切れない関係がある。安倍が銃撃される原因となった統一教会関連のビデオにはトランプも出ていた。だから、安倍とトランプは“統一教会兄弟”とも言える。

大体、森喜朗、麻生、二階俊博の老害トリオ、頭文字を並べればMANとなるが、これがすなわち自民党マンなのである。裏金疑惑の両巨頭である森と二階は追及を逃れているが、麻生にもさまざまに疑わしいことはある。しかし、なぜか検察は宮家に関連のある麻生には捜査の手をのばさないという。

かつて、統一教会と密接な関係の勝共連合推進議員連盟というのがあった。主に自民党の議員が並んでいて、中曾根康弘などの名もあったが、いまも現役なのは麻生である。先年亡くなった細田博之と、つい最近まで“現役”は2人だけだった。

麻生の差別意識は根深い。80代も半ばのこの男がまだ引退しないのがおかしいのだが麻生は2003年9月11日の自民党総務会で驚くような差別発言をした。それを野中広務が激しく非難する。

「総務大臣に予定されておる麻生総務会長。あなたは大勇会(派閥の名称)の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを私は大勇会の3人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんかできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」

魚住昭の『野中広務 差別と権力』(講談社文庫)によれば、この発言に総務会の空気は凍りつき、麻生は何も言えずに、顔を真っ赤にしてうつむいたとか。

その後も野中は折に触れてこれを問題にしたが、部落解放同盟中央本部は野中の告発に応えて麻生を糾弾することはもちろん、抗議さえしなかった。

『部落解放同盟「糾弾」史』(ちくま新書)の著者、小林健治は同盟が「“部落解放運動の生命線”と言われた“糾弾”にダブルスタンダードを持ち込み、抗議しやすい企業、宗教、メディアなどに対してのみ行い、本来の対象である権力への糾弾を回避した」ために社会的影響力を失っていったと指摘する。

特権にあぐらをかいて人権感覚のまったくない麻生がそれで生き残ってしまったのである。

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