他国の追随を許さぬ猛烈なスピードで宇宙開発を進める習近平政権。そんな中国に対して、NASAの長官が大いなる懸念を示したことが伝えられています。台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では今回、ビル・ネルソンNASA長官の「いずれ中国が月の権利を主張しだす」という見方を紹介。その見立ての根拠として地球上における中国の無法な行動を上げるとともに、「宇宙ですら中国が最大のリスク」と断言しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】高まる「月の主権を主張する中国」への懸念

高まる「月の主権を主張する中国」への懸念

● NASA署長再度警告 防範中國在月球「圈地」

NASAのビル・ネルソン長官は、Yahoo Financeの取材に対して、中国の宇宙開発能力の急激な進歩が、月の領土問題を引き起こす可能性を指摘しました。

ネルソン氏は、このところ、中国の宇宙開発への野心について、繰り返し警告を発してきています。

4月17日にはNASAの予算について下院歳出委員会で証言し、中国の急速な宇宙技術の進歩の裏にある極度の秘密主義と、民間宇宙開発プログラムの多くが軍事プログラムであることを指摘、「中国が、民間宇宙開発は平和利用のためのものだと理解することを望むが、そうした態度を示すことを見たことがない」とまで述べました。

● NASA長官、中国の宇宙進出を警戒

ネルソン氏は、いずれ中国が「月は自分たちのものだ」と言い出すに違いないと見ているようです。

昨年8月8日、ネルソン氏は、米中は月の南極に隠されているとされる水(氷)にどちらが最初にアクセスするか競争していると指摘、もしアメリカが将来、宇宙飛行士や宇宙船が利用できる大量の水を発見すれば、誰もが利用できるようになるが、中国の宇宙飛行士が先に月の南極点に到達すれば、主権争いの対象となっているスプラトリー諸島のように、月の南極点の所有権を主張し、月の南極点を占領する可能性があると警告しています。

● 美中探月爭霸 NASA:小心北京把月球南極變「另一個南海」

もし月の南極に水があれば、それを水素と酸素に変換してロケットの燃料として使用することで、月の南極を宇宙での「補給基地」にすることができます。アメリカが先にこれを見つければ、どの国にも利用可能とするが、中国が先に見つければ、その権利を独占し、南極の占有権まで主張する危険性があるというわけです。

ネルソン氏は、「この地球上でも、中国政府が南シナ海の国際的な島々のいくつかを自分たちのものだと主張し、その上に軍事滑走路を建設している」と、自らの懸念の正しさを力説しています。

実際、昨年11月11日にロシアが月の氷資源を求めて、47年ぶりに月着陸船「ルナ25号」を打ち上げましたが、ネルソン氏はロシアに対しては懸念は表明していません。彼は、ロシアは新たな宇宙開発競争のライバルではないと言い、2030年までに宇宙飛行士を月に送る準備ができているかどうかについては疑問を呈し、「宇宙開発競争は本当に我々と中国の間にあると思う」と述べています。

実際、中国の地球上における無法ぶりは、ますます目に余るものになってきています。

南シナ海のスカボロー礁付近では、最近ではフィリピン船に対して、中国海警局の船が放水銃で攻撃し、操舵室や手すりなどが損傷する被害が出ています。これに対して、中国はスカボロー礁の中国名である「黄岩島」という呼称を使って、「自らの固有の領土であり、フィリピン画は挑発的な行為をやめろ」と逆にフィリピン側を批判しています。

● フィリピン“南シナ海で船が中国海警局から放水銃による被害”

言うまでもありませんが、このスカボロー礁をはじめとする南シナ海については、中国の主権や管轄権、歴史的根拠がないことは、2016年のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決で明らかであり、とくにススカボロー礁の周辺海域で、中国がフィリピン漁船に妨害を加えていることも、国際法違反だという決定がくだされています。

● 南シナ海、中国の主権認めず 国際司法が初判断

にもかかわらず、中国はいまだその判決を受け入れず、あくまでも主権侵害をしているのはフィリピン側だと言い張っているのです。

そして、こうした身勝手な行為が、いずれ月をめぐる主張に及んでくるのは明らかでしょう。

しかも中国側は、フィリピンとの間で「緊張を管理する新しいモデルに両国が合意した」などと主張し始めていますが、フィリピン側は協議など一切行われておらず、何らかの合意に至った事実もないと強調しています。

そもそも、本当に合意に達したなら、フィリピン側が否定するはずもなく、これは中国側が国際世論を煙に巻くための強弁であり、プロパガンダであることは疑いの余地がないでしょう。

● フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガンダ」

このような事実捏造を繰り返すのが、中国の常套手段であることは、日本に対する歴史戦でも明らかです。「嘘でも100回言えば真実になる」ということで、中国側は虚偽を繰り返し述べるわけです。

清朝末期に20年以上も中国に滞在したアメリカ人宣教師アーサー・スミスは、中国人は誤解を利用する先天的才能に恵まれているといいます。こちら側はまったくその意図はないのに、あたかも合意があったかのように振る舞い、それを押し通すのが中国人の特性だというのです。

「あなたはこう仰った」。「いや、私はそんなことは言っていない」。「ですが、あなたがそう仰ったと理解しています。私どもは皆、あなたがそう仰ったと理解しています。ですから、どうか私どもの愚かさをお許しになって、あなたが仰った通りに、そのお金をお支払い下さい」中国人と外国人の間で交わされる何千もの会話は大体このようなものだ。
(アーサー・スミス著『中国人的性格』中央公論新社)

現在もなお、中国と何らかの約束を交わすことは難しい。英中共同声明で香港の「一国二制度」を50年維持すると約束したものの、中国は2020年に香港国家安全維持法を施行し、この約束を反故にしました。

ましてや、何の合意もしていないにもかかわらず、中国側は「合意した」と言い出すのだから、もはやまともに付き合うことすら無理なのではないかと思えてきます。

加えてアーサー・スミスは、中国には公共精神が欠如していると述べています。

中国人は、<公>のものに関心を持たないどころか、もしその公的財産が保護されておらず、またそれが利用できるものであれば、盗みを働こうと狙っている。道路の敷石は自分で使うために持ち去るし、(中略)中国のある港では、外人墓地を管理する者が誰もいないと分かるや、塀のレンガは一つ残らず持ち去られてしまった。
(同書)

このような特性があるため、月をめぐっても公共精神などあるはずがなく、勝手に自己ルールを持ち出して、権利を主張してくる可能性が高いのです。

100年以上も前から中国および中国人の特性が変わっていないことは、NASAの長官の警告からもよくわかります。

いずれにせよ、宇宙ですら中国が最大のリスクなのです。

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