映画としてはむしろ良作だった?

 2023年9月22日より、Amazonプライムビデオで実写映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が配信開始となりました。原作はもちろん漫画家・荒木飛呂彦先生による『ジョジョの奇妙な冒険』第4部のスピンオフ、「岸辺露伴は動かない」シリーズの1作品です。

 さてスピンオフ作品の人気が高まるなか、忘れて欲しくない作品があります。第4部本編の実写版『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』です。2017年に三池崇史氏監督が手掛けた同作はプロデューサーが何年間も荒木先生を口説き実現させたものであり、『ジョジョ』初の本格実写映画として大きな話題を集めました。

 ただし2023年現在においても「第二章」の公開予定はないまま、半ば凍結してしまっているのが現状です。なるほど実写版4部の評価は芳しいものではありませんでしたし、最終的な興行収入は9億2000万円でヒットしたとは言い難いのは事実です。

 一方、口コミサイトで低評価をつけている方の多くが、「キャスティング」に対するものであることは留意すべき点です。なるほど主演で東方仗助役の山崎賢人さんをはじめ、原作キャラにぱっと見で「似ている」かに関しては否定的な意見が多いのも頷けます。ただし、独特な絵柄を含め少年マンガのなかでも髪型や服装など圧倒的な癖を誇る『ジョジョ』キャラを三次元に落とし込むこと自体、至難の技だったでしょう。

 では映画作品としてはどうだったのでしょうか。世間一般に言われていたような「失敗作」だったのでしょうか。Netflixでの配信の影響もあってか、実写版4部の映画としての「再評価」が進みつつあるようなのです。例えばここ最近のつぶやきだけでも……

「背景の非現実感がすごい」「スタンドバトルのスピード感は見どころ」「ジョジョ実写否定するひとの大半は観てないのでは?」

 と、肯定的な意見がよくポストされています。実際、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』という作品は(第二章を見越した上での冗長さは多少あるものの……)原作の雰囲気を映像に再現した作品としてとても良くできていたのではないでしょうか。

 ロケ地であるスペインのシッチェスの異国情緒あふれる風景と、日本のごくごくあり触れた町の風景が交差する舞台「杜王町」においては虚実の加減が絶妙で、静止画では違和感を禁じ得なかった登場人物たちもイキイキと映えています。

 また、『ジョジョ』の真髄といえばスタンドバトルシーンです。対アンジェロ(片桐安十郎・演:山田孝之)戦におけるぬらりぬらりと忍び寄る水の恐怖演出は抜群で、ホラー作品を多数手がけてきた三池監督の手腕が遺憾なく発揮されています。

 さらに後半の対虹村兄弟戦でも、兄・形兆(演:岡田将生)の「バッド・カンパニー」によるおびただしい軍隊攻撃は画面いっぱいに緊張感を与え、さらに弟・億泰(演:新田真剣佑)の空間を削り取るスタンド「ザ・ハンド」も活躍こそ少ないですが、原作同様の「ガオン」ぶりで魅せてくれました。

 手放しで名作とも言えませんが、キービジュアルなどで見切りをつけてしまうには、余りにももったいない作品であることは確かです。『岸辺露伴』シリーズも素晴らしいですが、高橋一生さん演じる露伴が本編合流を果たすためにも「第二章」を願うばかりです。

 また、同作の最後は原作と違い、4部のラスボス・吉良吉影のスタンド「キラークイーン」の「第2の爆弾・シアーハートアタック」が形兆を殺害していましたが、シリーズ屈指の人気ラスボス・吉良を誰が演じる予定だったのかも気になります。