「2年前、お散歩がてらに
近所を見回りしていたらいた
見付けてしまった
子猫4匹と母親が楽しそうに
遊んでるう」

2年前、夫婦が散歩中に出会った母猫と子猫4匹を保護してから最後に母猫が里親さんの元に行くまでのエピソードがInstagramで話題になりました。

投稿したのは、夫のジャックさん(@u.jack49)。夫婦で猫の保護ボランティア活動しているとのこと。今年3月、2年前に保護した母猫のリンリンちゃん(推定4歳)がついに里親さんの元へ“嫁いで”いったそうです。そんな幸せをつかんだリンリンちゃんが子猫4匹とともに保護された時のことを思い出しながら投稿。「おめでとうございます!」「これから母ニャンの幸せを」と祝福のコメントがたくさん寄せられています。

多くの人たちの心をほっこりとさせたリンリンちゃんたちのストーリー。保護した時のことや里親さんと出会うまでのことなどを、ジャックさんに聞きました。

2年前の7月深夜、マンションの一角にたたずむ三毛猫と子猫たちを発見 24時間内で全頭保護!

──リンリンちゃんたちを保護されたのは2年ほど前だとか。

「2022年7月2日深夜、自宅から少し離れた道路でよく猫が車にひかれているところがあるというのを聞き、その道路付近の猫事情をお散歩しながら調査していました。あるマンションの一角でたたずんでいた三毛猫と出会ったんです。それが母猫のリンリンでした。『日を改めてTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと)の予定を組まないといけないね』と妻と話して帰ろうとしたときに、マンションの向かいの草むらのようなところで遊んでいる子猫を僕が発見し、そこから親子猫の捕獲大作戦になってしまいました」

──「捕獲大作戦」はどうなった?

「一度自宅に帰り捕獲に必要な道具を準備して、また現場に戻りました。親子がいるか確認したところ、リンリンの近くでぴょんぴょん遊んでいる子猫4匹の姿が見えて。親子が遊んでいる場所の上の方に国道が走っており、斜面を登ってしまうと国道の方へ出られるようになっているため、親子を刺激しないように準備を進めました。

しかし、私たちの存在に気づいてしまった親子たちは草が生い茂っていることろにあるU字溝に隠れてしまったので、捕獲器を1台だけ設置。いったんその場所から離れました。しばらくして現場に戻ると捕獲器の中にはリンリンが。中に入れたご飯が空になっていたのでかなりお腹が空いていたようでした。次に子猫の保護に動きましたが、子猫たちはU字溝の奥に行ってしまい深夜の保護は断念し帰宅。僕は帰宅後にリタイアしてしまったのですが、妻が仮眠を取り5時くらいに現場に戻りました。ただ子猫たちが入り込んだU字溝が狭すぎて捕獲器を置けず、ここからは妻が素手での捕獲を試みたそうです。ついに6時半過ぎ、子猫2匹を保護。残り2匹はなかなか捕まえられず、保護猫たちのお世話があるため断念し帰宅しました」

──残り2匹の保護は。

「この日はトライアルへ行っている子の譲渡の手続きが2件あったため、私たちが再び現場に戻れたのは夕方。U字溝の中に2匹いることは確認できましたが…警戒しているため全く捕まえることができず、一度帰宅。そろそろおなかが空くだろうと22時頃、現場に戻りました。僕は次の日が仕事のため、妻だけで現場に。やはり、お腹が空いていたようですんなり残りの2匹も保護。親子発見から24時間以内に全頭保護することができました」

──後日、動物病院に連れていかれたかと思いますが、保護時の猫ちゃんたちの体調などはいかがでしたか。

「子猫の状態からもう母乳はなくても大丈夫と判断し、リンリンは運良く捕まえた日に避妊手術をしてもらうことができました。痩せていましたが、血液検査も問題なく、ウイルス検査はどちらも陰性でした。また子猫たちは生後1カ月半くらいだといわれて。ただ居た場所が草と虫まみれの場所だったため、身体全体にシラミが付いておりみんな丸刈りに。風邪をひいている子もいましたが、ひどくはなかったのでお薬ですぐに良くなりました」

ある日突然、母猫が子猫にシャーシャー 子離れ?

──おうちにお迎えしてから、子猫たちの様子は。

「シラミと風邪以外は体調面も安定していたものの、満足にご飯を食べられなかったせいか、ガツガツと食欲は旺盛。しばらくの間は隔離のためリンリンと離していましたが、不安そうにしながらも兄妹で仲良くしていましたね。リンリンと合流したときはとっても甘えていて久しぶりにママのおっぱいを吸っていました。子猫たちは他の同じ月齢の子猫たちとも仲良くなり、兄妹以外の子とも遊ぶなどすくすく成長してくれましたが…ある日突然、リンリンが子猫にシャーシャーするようになってしまい、とても甘えん坊のひとりがママに甘えられなくなって、他の子に甘えるようになったりも。当初リンリンと一番甘えん坊の茶白の子猫を親子一緒での譲渡を考えていたのですが、リンリンが子離れしたため子猫は子猫だけで里親さんを募集することにしました」

──子猫ちゃんたちの里親さんはどれくらいで見つかった?

「子猫は兄妹ペアでの譲渡希望で1組目は保護から2カ月後に里親さんに譲渡。その後はコロナの第7波の影響で譲渡会に人が来なくなり、なかなか譲渡が決まらない状態になってしまいました。やっと年明けから人が来てくれるようになって、もう1組は保護から8カ月後の譲渡でした」

──子猫ちゃんたちが巣立った後のリンリンちゃんの様子は。

「リンリンは特に変わった様子はなくいつも通りでしたね。これはあくまで僕が感じたことですが、安全な場所に保護されてお腹いっぱいご飯を食べられる環境になり、子猫たちは人に託して自分(リンリン)はゆっくりしたい、そんな気持ちもあり子猫たちに冷たい態度を取って親離れさせていたのかもしれません。そして分かったのは、リンリンは猫が嫌いでした…(苦笑)。人には子猫のように甘えてくれますが、他の猫が近づくと怒ったり、ひとりになれるスペースで過ごしたり、もう本当にひとりでゆっくりしたいという感じでした。

お外にいた時はまともにご飯も食べられず、子猫たちを生み、育て、外敵から我が子を守り、本当にギリギリの状態で限界だったんだと思います。だから初めて見かけたときの姿が、近くにいる子猫を見守りながらも途方にくれている…そんなふうにも見えましたね」

子猫たちが里親の元へ巣立ち、今年3月ついに母猫もずっとの家族が…!

──そんなリンリンちゃんもついに里親さんの元へ。

「はい。リンリンを譲渡したのは今年の3月9日です。里親さんは昨年の12月から譲渡会に来てくださっていました。当初は他の猫の里親希望を出してもらったのですが、いろいろな事情もありリンリンのことをお伝えしたところ、リンリンとお見合いをすることに。実際にお見合いをしてお申込みいただいたのが、1月下旬。脱走対策やその他のご準備にお時間がかかってしまい、2月下旬からトライアルスタートで2週間後に無事に譲渡となりました」

──今回のように子猫と母猫を保護した際、母猫だけはひとりで生きていけるから避妊手術をした後、リリースするボランティアさんも居るとのこと。とはいえ、ジャックさんご夫婦は成猫も積極的に保護されて、譲渡に結び付けることに力を入れて活動に取り組まれているそうですが、その活動に対する思いをお聞かせください。

「我が家も他の方と同じでキャパの問題もあります。今年の動物愛護法改正で完全施行される、猫などを飼う頭数規制により、保護できる頭数を守らなければいけません。しかし、僕たち夫婦が住んでいる地区では過去に猫を駆除しようと町内会の人たちが猫を傷つけていたことを知りました。それがボランティアになったきっかけのひとつです。TNRをして新たな命は生まれませんが、野良猫たちが置かれている環境が良くなるわけではありません。町内会という立場で猫を駆除しようとするならば、僕たち夫婦は戦い猫たちを守ります。ただたくさん猫がいる状況でどうしたらよいのか分からず、うちにご飯を置き、来た子たちを保護するようにしました。中にはどうしてもリターンした子もいます。

今回、子猫だけではなく母猫も一緒に保護した理由は、母親から子どもを奪うことができなかっただけ。過酷な環境で子育てをしていた母猫にも幸せになってもらいたい。それだけです。またリターンをした後にしっかりお世話をしてくれる餌やりさんがいないというのも理由。リンリンはリターンをしても、ご飯を食べられる場所もなく、どこにいるか分からない餌やりさんのおうちのおこぼれを食べるしかない状況でした。あまりに酷だと思ったから。

成猫は自分でご飯を探せるから大丈夫。餌やりさんがいればリターンと、そうしなければ自分がつぶれてしまう。保護したくてもみんな保護するのは無理。その通りです。でも、虐待されたり事故に遭ったりする子がいるのも事実。夫婦ふたりだけでの活動で預かりさんもいないため、新しい子の受け入れは団体さんのお手伝いだったり、うちにご飯を食べに来てうちを寝床にしている子と限定した小さな活動にしています。これからも、せめてうちに来た子は助けてあげたいです」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)