映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアン。行きたい時代と時間を設定すれば、未来にも過去にも行くことができる車型のタイムマシンです。無塗装のシルバーの車体と、特徴的なガルウィングは、映画を観たことが無い人でも記憶にあるのではないでしょうか。

あのデロリアンを実際に所有している人が日本にいます。しかもコレクションアイテムとしてではなく自家用車として。デロリアンオーナーのnaeroledさんにお話を聞きました。

――自家用車なんですね!

naeroled:他の車は持ってなくて、唯一の自家用車がデロリアンなんです。学校に娘を送るのにも、スーパーに米を買いに行くのにも使用しています。引っ越し屋で働いていたことがあるのですが、夜分で社用車が出せず、お客様に「大変趣味的な自動車でお届けしますが、怒らないでください」と伝えて、デロリアンの助手席に段ボールを詰めて走ったこともあります。

――どんな方法で入手されたんですか?

naeroled:平成3年に外車雑誌の広告で見つけました。京都の自動車屋さんなのですが、何台か有ったデロリアンの中では一番安く、390万円で購入しました。

――想像よりは安い気がします。普通の新車くらいの価格ですね。ハンドルには、ドク役のクリストファー・ロイド、ロレイン役のリー・トンプソン、ビフ役のトーマス・F・ウィルソンのサインも入っていますが、お会いできたんですか?

naeroled:2018年に東京で催されたハリコンなるイベントに御三方が来られると知り、夜行バスでハンドルの中央の部品のみを持って行きました。だから、自分たちが何にサインしているのか分からなかったんじゃないですかね。

――ハンドルではなく、ハンドルの中央の部品!映画が公開されたのは1985年ですが、お持ちのデロリアンもその年代のものなのでしょうか。

naeroledさん:1981年から1983年までの3年間の生産で、1982年でメーカーは倒産しました。私が買ったのは店で一番安いだけあって、屋根が歪み、運転席のドアハンドルはもげて、エンジンからは異音がしていました。

――故障も何度もご経験されたとのことですが、一番印象に残るエピソードを教えてください。

naeroled:デロリアンの持ち主が年に1度集まる「デロリアンオーナーズクラブ」のミーティングに参加した際に、後輪のサスペンションを支えるボルトが走行中に折れた事です。初めてJAFを呼びました。高速の入口まで運んでいただいて、そこで豊橋の専門店の方とバトンタッチして、事なきを得ました。でもその故障のおかげでオーナーズクラブの皆さんと仲良くなり、今は副会長をやっています。

――デロリアンのオーナーにあるのが夢、という方は沢山いらっしゃると思いますが、アドバイスはありますか?

naeroled:デロリアンは、1人の優秀な男性が夢の車を作って売り出そうとした、他に無い魅力的な車ですが、同時にあまりの出来の悪さでメーカーの息の根を止めてしまいました。漏れた取れた止まったは当たり前。最近のトヨタからいきなり乗り換えたら、夢は10分ぐらいで悪夢に変わる可能性が有ります。それでも購入して維持する覚悟の有る方には、他の人が経験出来ない素敵な未来が待っています。

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作品中に登場するタイムマシンをデロリアンと呼称しますが、実はDMC-12という車種で、デロリアンはメーカー名とのこと。マニアだけが知るような車が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をきっかけに世界中で大人気になり、映画公開後39年たった今でも愛されて続けています。車の歴史だけでなく、映画史にも残る名車になったのではないでしょうか。

(まいどなニュース特約・ゆきほ)