前鹿児島県警生活安全部長(60)が情報漏えいの罪で起訴された21日、県警は定例会見で捜査の経緯を説明した。捜査終結の区切りに映るが、県民の納得からは程遠い。「どちらが真実か」「組織の擁護に終始している」−。県内各地で県警組織への不信や、真相解明を求める声が相次いだ。

 霧島市の女性会社員(34)は「逮捕されるリスクを取って、県警の闇を暴こうとした被告の行為は公益通報者として守られるべきだ」と考える。野川明輝本部長の説明は「隠蔽(いんぺい)に隠蔽を重ねているように映る」とし、「正しいのはどちらか、法廷で真実を明らかにしてほしい」。

 被告の前部長は2020年から1年間、鹿屋署長を務めた。鹿屋市北田町で電器店を営む男性(57)は「コロナ禍であまり接点はなかったが『正義感が強い人』との評判を聞いていた。よほどのことがあって情報を漏らしたのでは」とおもんぱかる。

 真っ向から対立する被告と野川本部長の主張に、枕崎市の会社員女性(33)は「どちらが真実なのか」と困惑する。

 女性用トイレに侵入して女性を盗撮したとして逮捕、起訴された枕崎署の元巡査部長は、事件後も半年近く勤務していた。「もし自分が事件や事故に遭った際、そんな人に対応されていたかもと思うと怖い」

 鹿児島市の大学生男性(21)は、野川本部長の説明も説得力がなく、県警の説明責任は果たされていないと感じる。「今の県警では、何かあったときに相談するか迷ってしまう。ごまかさず速やかに解決して、二度と起こらないようにしてほしい」と話した。

 県警の組織としての在り方にも不信の声が上がる。志布志市の専念寺前住職の男性(88)は03年の県議選を巡る公選法違反事件(志布志事件)で無罪が確定した住民を支援する「住民の人権を考える会」の会長を務めた。今回の異常事態は本部長が信頼されていない現れだと感じている。「県警の会見は組織の擁護に終始している印象だった。自浄能力が働いていない。県民に寄り添わず保身に走る体質は志布志事件に共通するところがある」と残念がった。

 元県警警察官の男性は、警察庁の監察官が派遣される前に野川本部長の処分が決まった点に不信感を抱く。結論ありきでは、徹底的な検証はできないと考えているからだ。「うみを出し切らないと県警組織は良くならない。本部長の言い分をうのみにする形だけの検証にならなければいいが」と話した。