アール・ブリュット作品の展覧会「つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人−たとえば、『も』を何百回と書く。」が現在、滋賀県立美術館(大津市瀬田南大萱町)で開催されている。(びわ湖大津経済新聞)

 世界的にも高い評価を得ているという澤田真一さんの陶芸作品

 同美術館によるとアール・ブリュットは、1940年代、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが、精神障害者や独学の作り手などの作品に心を打たれて提唱した美術の概念で、「芸術的文化によって傷つけられていない人たちによって制作されたもの」と定義されている。日本語では「生(なま)の芸術」と訳されている。

 同美術館は2016(平成28)年から収集方針にアール・ブリュットを加え、世界各地で展示され高い評価を得ているという澤田真一さん(滋賀県在住)の作品などを収集してきた。2023年8月には日本財団から2010年にパリのアル・サン・ピエール美術館で開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」出展作品の寄贈を受けている。

 同展では寄贈を受けた作品から45人の450点を選び、自分の名前や母親の絵など同じテーマで作り続ける「繰り返し」の行動に着目した「繰り返しのたび」や、路上に落ちていた物で作るオブジェや派手な帽子で町を歩くパフォーマンスなど社会と関わりのある作品を紹介する「社会の密林へ」などのテーマに合わせて展示する。澤田さんの陶芸作品は無数のとげが特徴的。齋藤裕一さんの作品「ドラえもん」は、ひらがなの「も」を青いペンで繰り返し書いている。戸來貴規さんの日記は、一見すると幾何学模様のようだが、解読すると日付や天気、一日の出来事が書かれている。

 「日本のアール・ブリュットの作り手は知的障害者が大半を占めているのが事実だが、アール・ブリュットは必ずしも障害者の芸術というわけではない。既存のアートを知らない人が評価を求めずに内なる思いを表現しているからこそ、独創的で人を引き付ける魅力がある」と同美術館学芸員の山田創さん。館長の保坂健二朗さんは「世界的にもアール・ブリュットに注目している美術館は多い。当館も美術品として所蔵している。日本財団から寄贈を受けたのは2010(平成22)年時点で日本のアール・ブリュットを代表するもので、日本においてアール・ブリュットの概念を形成していった作品群」と話す。

 山田さんは「作り手は自分をアーティストだと思っていない人も多く、作りたいという願望なのか、作らなければどうにかなるという強迫観念なのか、作る理由はそれぞれだが、45人の作ることへのエネルギーを感じてもらえれば」と呼びかける。

 6月23日まで。

 同美術館の開館時間は9時30分〜17時。月曜休館(祝日の場合は開館、翌火曜休館)。観覧料は、大人=950円、高校・大学生=600円、小・中学生=400円。