2024年4月25日、ホンダの人気コンパクトSUV「ヴェゼル」のマイナーチェンジが実施されました。3つのグレード設定、それぞれにお勧めのポイントあり。ということで、今回はそのなかでも上級グレード「Z」について詳しくご紹介します。

Zのエクステリアは差別ポイントは少ないが、機能面が超充実

今回ご紹介する「e:HEV Z」は、装備はヴェゼルのラインナップで最高峰に充実しているうえ、気をてらわないシンプルな仕立て、そして意外(?)にもお手頃な価格を特徴にしているため、最量販グレードとなることは必至でしょう。

エクステリアデザインでZと認識できるもっとも大きなポイントは、装着されるホイールです。「G」や「e:HEV X(以下、X)」では16インチのタイヤ&ホイールを履いていますが、こちらは18インチとなります。ブラック塗装と切削加工を組み合わせた、近年のトレンドに合わせたものです。

また細部に目を向けると、シルバー塗装のバンパーロアーガーニッシュがフロントとリアに装着されているほか、サイドにはクロームメッキ加飾のドアロアーガーニッシュが備わります。

続いて他グレードとの装備による差異で注目なのが、フロントのシーケンシャルウインカーの採用です。いわゆる「流れる」ウインカーを採用しているのは、Zのみとなります。どうでも良いたわごとですが、夜間に流れるウインカーを放つヴェゼルを見かけたら「お、上級グレードだ」と認識できますね。

さらにZでは、フロントライトにアダプティブドライビングビームが装着されます。これはロービームとハイビームを自動で切り替えるほか、対向車や歩行者を検知すると、その部分のみ遮光するという優れモノです。ちなみにこれは、今回のマイナーチェンジ実施に合わせてヴェゼル初採用された機能です。

ほかにもZはハンドルを切った方向や、ウインカー操作に合わせて目指す方向を照射するLEDアクティブコーナリングライトが装着されたり、フロントドアに撥水ガラスが採用されています。コーティング施工せずとも水を弾いてくれるガラスが装着されているのは、なんとも有り難いことですね。

あと、ドアロック連動のオートリトラミラーや、リバース操作に連動して助手性側のドアミラーが下を向く機能など、とにかくZが有する装備は非常に実用的かつ充実しています。

インテリアはシンプルで高品質。快適装備も抜かりなし!

さて、続いてはインテリアを見てみましょう。ブラックを基調としたシンプルな造りで、気をてらった印象はありません。

が、よく見るとインパネやドアライニングにはシルバー塗装のガーニッシュが施されていたり、センターコンソール(シフト周り)にも同じくシルバー塗装の加飾が備わります。さらにマイナーチェンジで新設された大型のインパネ中央のトレー周辺を囲うピアノブラック加飾もZのみに用意されます。

と、細かな「高品質化」が施されているZは、コンパクトSUVにみられる「チープさ」を見つけることができません。そもそもヴェゼル自体、他モデルに比べて高い質感のインテリアをアドバンテージとしていますので、当然と言えばそうなのですが、Zはその中でもさらに上をいった印象です。

またシートはホンダお得意の高品質な合成皮革「プライムスムース」と触り心地のやさしいファブリックのコンビシートを採用しています。最近登場したWR-Vのそれと比べても、こちらはファブリック表皮にエンボス加工が施されていたりと、特別感も加味されているのが特徴です。

そのほか快適装備の充実ぶりも特徴で、オートエアコンは左右で独立して温度調整ができたり、FF仕様であってもシートヒーター、さらにはステアリングヒーターまで備わります。

リアシートの快適性も他とは一線を画するものです。まず特筆すべきは後席用のエアコン吹き出し口が備わることです(といっても、WR-Vでも装着されているので、できればヴェゼルは全車標準装備してほしかったですが)。後席を使用する場合が少なくない方にとっては、あるとないとでは快適性が大きく変わります。

さらに後席用のUSBチャージャーが2つ備わったり、全席ワンタッチ式パワーウインドウが装備されるほか、運転席と助手席それぞれの裏にシートバックポケットが備わるなど(とくに運転席裏はスマホ用のポケットも装備!)、Zではリアシートを利用する方への快適装備がとにかく充実しています。

トランクルームに目を向けると、まずハンズフリー機能付きのパワーテールゲートが備わるのもZならでは。スペースは当然に他モデルと変わりありませんが、他グレードではオプション扱いとなるパーセルカバー(トノカバー)が標準装備されるのも、Zだけです。

このようにインテリアをみても、その装備充実ぶりはGやXと比べてしまうと正直Z一択では? と思ってしまうほどです。

実は上級グレードでありながら、超おトク仕様だった!

このようにZの装備を深掘りしてみると、Zでしか装備されていないものが続々と出てきました。さらにその数多くは「あったら嬉しい」実用的なものばかりというのも、何ともホンダの商売のうまさを感じます。だってここまで用意されたら、Zを選ぶ他ない! と思わせられる人が少なくないと思われるからです。

さらに興味深いことに、Zには「VGR」と呼ばれる可変ステアリングギアレシオが搭載されています。これはハンドルの操作量に応じてタイヤの切れ角が変化するというもので、低速ではより軽快な走り(運転もしやすくなる!)を、高速域では落ち着いた一体感ある走りを生み出します。「え、走りも違うのかよ」とツッコミを入れたくなってしまうのは置いておいて、その走りの差、気になるところですね。

さて、今回はマイナーチェンジを受けたヴェゼルのなかでも、最量販必至のZをご紹介しました。GやXと比べてここまで装備差があるってことは、やはり価格も相応、というかぶっちぎりに高そうな気がします。が、実はXとの価格差はなんと「31万200円」です。

これ、とても小さいと思いませんか?ホイールやライトも違ければ、エアコンも後席快適性も電動テールゲートの有無も違います。さらに細かな「便利機能」「高品質化」が施されていますから、ずいぶん「おトク」仕様だと認めることができます。

ヴェゼル Z(FF車)の319万8800円という価格は、対抗馬カローラクロスのHEVモデルで最上級モデル「Z」の325万円、や、キックスの上級モデル「X スタイルエディション」の321万8600円を凌ぐリーズナブルさを発揮しています。

こうした「コスパの良さ」という観点でみても、新型ヴェゼルのZは、選んで損ナシなグレードとして多くの人にお勧めできるモデルだと思いました。
(文:川内優作、写真:森山良雄)

●ホンダ ヴェゼル e:HEV Z(FF) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4340×1790×1590mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●総排気量:1496cc
●最高出力:78kW(106ps)/6000−6400rpm
●最大トルク:127Nm/4500−5000rpm
●モーター最高出力:96kW(131ps)/4000−8000rpm
●モーター最大トルク:253Nm/0−3500rpm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・40L
●WLTCモード燃費:25.3km/L
●タイヤサイズ:225/50R18
●車両価格(税込):319万8800円