全国的に例年より遅い梅雨入りとなりそうな今年。雨の日ばかり続いて出かけるのが億劫になってしまいがちだけど、いざ家で過ごすにしても、どうやって過ごすべきか迷ってしまうのがこの時期の悩みの種。そんな時は、家にいながら異世界を味わえるSF映画や、雨で鬱々とした気分を吹き飛ばしてくれるコメディなど、話題の映画をゆっくりと楽しむのがいいだろう。

そこで本稿では、20世紀スタジオが送りだしてきた歴代アカデミー賞受賞映画のなかから、この時期にこそ観たい傑作たち13本を、「SF/ファンタジー」「ラブストーリー」「ヒューマンドラマ」「コメディ」の4ジャンルに分けて紹介していこう。

■圧巻の映像美&壮大な世界観に没入!

まずは世界中の映画ファンを唸らせる鬼才の最新作から、世界的ヒットメイカーが放つ超大作まで、圧倒的なクリエイティビティに驚愕する「SF/ファンタジー」作品を3作品。

昨年秋に行われた第80回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝き、今年3月に行われた第96回アカデミー賞では、主演女優賞をはじめ4部門に輝いたヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』(23)。エマ・ストーン演じる若き女性ベラが、天才外科医の手によってよみがえり、未知なる世界を知るべく大陸横断の冒険へ。華麗で大胆、そして奇想天外な旅の光景に、思わず釘付けになってしまうこと間違いなしだ。

第82回アカデミー賞で3部門に輝き、全世界歴代興収ランキング第1位の座にいまなお君臨するジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)と、その続編で第95回アカデミー賞視覚効果賞を受賞した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)を一気見するのもおすすめだ。“映像革命”と謳われた圧倒的な映像世界と、現実では決して味わえない迫力と美しさにあふれた世界観。2作とも長尺でなかなか観る時間が取れなかったという人こそ、この機会にアバターの世界へ没入しよう。

■悲恋映画の名作を、超高画質で堪能!

続いては、甘くせつない恋愛模様を描くラブストーリーを3作品。キャメロン監督が手掛け、世界中で社会現象を巻き起こした『タイタニック』(97)は、もはや説明不要のロマンチック巨編。第70回アカデミー賞では作品賞を含む歴代11部門を受賞する偉業を成し遂げた同作は、先日公開25周年を記念した「4K UHD アニバーサリーエディション」が発売されたばかり。公開時よりも格段に美しくなった画面で、ジャックとローズのロマンスをその目に焼き付けてみては。

第90回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いたギレルモ・デル・トロ監督のファンタジー『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)や、第94回アカデミー賞で助演女優賞を受賞したスティーヴン・スピルバーグ監督のミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』(21)も、『タイタニック』と同じように身分や境遇の違う者同士のせつない悲恋を描いた物語。卓越した映画美術も見どころとなっており、様々な視点からその世界に浸ることができるだろう。

■オスカー作品賞受賞の珠玉の名作に触れる!

第38回アカデミー賞で作品賞など5部門を受賞したロバート・ワイズ監督の『サウンド・オブ・ミュージック』(65)。誰もが一度は聞いたことがある名曲の数々に乗せて描かれる、家庭教師のマリア(ジュリー・アンドリュース)とトラップ家の7人の子どもたちの心温まる物語は、製作から半世紀以上経ったいまでもまったく色褪せない。往年の名作に触れてみるのも絶好のタイミングではないだろうか。

ヴァンゲリスによるテーマ曲が有名なヒュー・ハドソン監督の『炎のランナー』(81)も第54回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝く不朽の名作。1924年のパリオリンピックで活躍した2人のランナーの実話を描いた同作は、100年ぶりのパリオリンピック開催が目前に迫ったいまだからこそ観たい一本だ。

そして第93回アカデミー賞で作品賞など3部門に輝いたクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』(21)と、第90回アカデミー賞で主演女優賞など2部門に輝いたマーティン・マクドナー監督の『スリー・ビルボード』(17)は、名女優フランシス・マクドーマンドの迫真の演技に注目。

■ユーモアたっぷりの世界で爽やかな気分に!

「SF/ファンタジー」のところで紹介した『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが初タッグを組んだ『女王陛下のお気に入り』(18)は、第91回アカデミー賞主演女優賞受賞作。18世紀初頭のイングランド王室を舞台に、女王と彼女に使える2人の女性の愛憎が荘厳かつコミカルに描かれていく。

第87回アカデミー賞で4部門に輝いた『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)は、世界中の映画ファンを魅了するウェス・アンダーソン監督のセンスが存分に発揮されたミステリー・コメディ。レイフ・ファインズやジュード・ロウ、シアーシャ・ローナンやレア・セドゥなど超豪華なキャスト陣が織りなすテンポのいい掛け合いは必見。

そして第92回アカデミー賞で脚色賞に輝いたタイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』(19)も、戦時下のドイツという暗い時代背景とは対照的に、10歳の心優しい少年の物語がユーモラスかつ晴れやかに描かれており、梅雨のジメジメした気分を爽やかに吹き飛ばしてくれること間違いなし。

紹介した13作品は、いずれもブルーレイやデジタル配信などでお気軽に楽しむことができる。名作・傑作ぞろいの20世紀スタジオ作品で、梅雨の在宅時間を彩ろう!

文/久保田 和馬