柴咲コウ主演映画『蛇の道』(公開中)の初日舞台挨拶が6月14日、新宿ピカデリーにて開催され、柴咲、西島秀俊、青木崇高、黒沢清監督が登壇。さらに、ダミアン・ボナールもサプライズ登場した。

黒沢清監督が1998年に手がけた同名作をフランス版としてセルフリメイクした本作は、8歳の愛する娘を惨殺された父親(ダミアン・ボナール)が、偶然出会った心療内科医の小夜子(柴咲コウ)の助けを借りながら、犯人を突き止め復讐を果たしていく姿を描くリベンジサスペンス。小夜子のもとに通う患者、吉村を西島が、小夜子の夫、宗一郎を青木が演じている。

スタッフはすべてフランス人。黒沢監督は撮影を含めて3か月パリに滞在したという。「最高傑作ができた」という言葉が飛び出した理由について、「パリに3か月暮らしていた。ただ、映画を撮ったということだけではない。人生において貴重な時間でした」と説明した黒沢監督。クランクアップの瞬間のスタッフ、キャストの表情が印象的だったとし、「なにかを成し遂げたという感じが表情に出ていた。多分、僕もみんなと同じ顔をしていたんだと思います。映画がどのように観てもらえるのかは分からないけれど、みんなで作ったんだという経験において、最高の幸せを感じていたのだと思います」と充実感を滲ませた。

全編フランス語での撮影に挑んだ柴咲は「この映画がなければ、フランス語にここまで没頭することはなかったと思います。お仕事で関われてよかったなとつくづく思います」とニッコリ。この映画での出会いや芝居をさらにしていきたいと目を輝かせていた。

青木は劇中、日本からリモートで柴咲と会話をするシーンで登場している。リモートで話すシーンにもかかわらず撮影はパリで行われた。「撮影現場の空気を感じられたのでよかった」と語った青木は、もし東京での撮影だったら「一緒に映画を作っていくという感覚からは離れてしまうので、呼んでくださってよかったです」と感謝。さらに、撮影は柴咲の隣の部屋で行われたそうで、「小夜子の殺気は隣の部屋でもビリビリ感じました。思い出すといまでも鳥肌が立ちます」と、柴咲の“殺気”を解説していた。

イベントではリモートでボナールも舞台挨拶に参加する予定だったが、柴咲らがボナールが映し出されるはずのスクリーンに向かって呼びかけると、客席から「ここにいるよ!」という声が。黒沢監督をはじめ、柴咲も西島も青木もボナールの来日を聞いていなかったためサプライズ登場に驚きを隠せない様子。柴咲は驚きながらもフランス語で挨拶を交わす。

「僕らをだます意味はあったのかな?」と苦笑いした黒沢監督にボナールは「プロデューサーと組んでサプライズを演出しました。眼鏡をかけて、マスクをして2日間、隠れていました」と茶目っ気たっぷりに語る。ボナールはこの日、客席で映画を鑑賞したそうで、黒沢監督、そして柴咲ら日本の俳優陣と撮影した作品に自分が出演し、それを日本の映画館で観るなんて想像していなかったと語り、ちょっと不思議な気分を味わったと語り、大きな拍手を浴びる場面もあった。

ボナールとの共演シーンはなかったという西島。「映画からも、いま、お話ししている姿からも人柄が伝わってきます」と対面に笑顔。青木はボナールがみんなのためにおいしいレストランに招待してくれたことを報告し、改めてお礼を伝える。本当にすてきなレストランで、ご褒美のようだったとうれしそうに話す青木に「僕はこの映画に出ることでレストランに行ったような気分が味わえました」と、日本の監督、キャストと一緒に映画を作れた喜びを噛み締めるボナールに、黒沢監督も柴咲、西島、青木、そして観客も大興奮だった。

取材・文/タナカシノブ