映画『ディア・ファミリー』の初日舞台挨拶が6月14日にTOHOシネマズ日比谷で開催され、大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、新井美羽、松村北斗(SixTONES)、月川翔監督が登壇した。

娘の命を救いたい一心で人口心臓の開発をはじめ、その後に世界で17万人もの命を救うことになるIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルを生みだした父親の実話を映画化した本作。監督は『君の膵臓をたべたい』(17)の月川翔が務めた。撮影は、2022年の年末から2023年の年始にかけて行われた。

主人公である坪井宣政役を演じた大泉は「やっとこの日を迎えたなという思いでいっぱいです」とモデルとなった一家に思いを馳せながら、感無量の面持ち。宣政を支える妻の陽子を演じた菅野は、「誰かを思うと人は頑張れるんだなと、この映画を通して私もその思いを新たにしました。ご存命の家族の物語をやることには、演じ手として責任がある。これまでとはまた違った思いで、撮影に臨ませていただきました」と覚悟して挑んだと話していた。

また映画の内容にちなみ、「家族への思い」を語ることになると、大泉は「この物語は、自分の娘を助けるために、知識がないところから人工心臓を作るという、すごい話。でも僕も自分の家族のためにとなったら、やれることはなんでもするだろうなと思います」と吐露。「人工心臓を作るという決断になるかはわからないけれど、すべてを投げ打ってもなにかをするという思いは同じだなと思いました」としみじみと語っていた。

どんな困難がのしかかっても「次はどうする?」という言葉を胸に、諦めない人々の姿を描く本作。映画の内容にちなみ、「次に叶えたい夢」についてそれぞれが告白するひと幕もあった。「大泉さんのかねてからのファンというか、マニア」だという松村は、「大泉さんの作った舞台もあります。どれか一個、リメイク的にいつかやりたい」と10年ほど秘めていたという夢を口にした。大泉は「ええ!それはすばらしいよ!やって!SixTONESで『下荒井兄弟』とかやってよ!」と大喜びしながら、自身が脚本と演出を手がけた「TEAM NACS」の舞台を、松村の所属するグループに演じてほしいと希望。SixTONESには6人のメンバーがいるが、同舞台は5人兄弟を描く舞台のため、松村が「SixTONESでやってみたい。でも1人多い」と言うと、大泉は「誰か1人、辞めさせてよ」と爆弾発言をするなど、2人の丁々発止のやり取りに会場も大笑いだった。

大泉の発言に松村は「バカを言うんじゃない。うちは1人も欠けたら意味がない。(そんなことをしたら)一生恨みますよ」とグループ愛をにじませながら、「『下荒井』を(SixTONESの)6人でやれたら、僕はもうこの人生はクリアだと思っている」と力を込めた。その熱意に火をつけられた大泉は「じゃあ(脚本を)書く!頑張ろう!」と6人にあてた舞台を作ることに乗り気だったが、松村は「あとは5人が大泉洋というものにどれほど熱があるか…」と他のメンバーの意欲を気にすると、大泉は「ないの!?」と肩を落として再び会場の笑いを誘っていた。

3姉妹を支える一家の長女、奈美役の川栄は「(AKB48)グループを卒業する時に、朝ドラに出ること、大河ドラマに出ること、日本アカデミー賞を獲ることという3つの夢を掲げて卒業した」と回想し、「朝ドラと大河ドラマは叶えることができた。日本アカデミー賞を獲ることはまだ叶っていないので、ぜひその夢を叶えたい」と意気込み。三女、寿美役の新井は「中学校、高校の最初はコロナ禍で、ちゃんと学校行事ができなかった。修学旅行も海外の予定だったんですが、それも叶わなくて。海外に行く機会を何度か逃してしまった。今年の目標は海外に行くこと」と期待に胸をふくらませた。

心臓疾患を抱える次女、佳美役の福本は「今回は大泉さんと親子役でしたが、寂しいシーンも多かった。今度は元気な姿でバディを組んでみたい」と瞳を輝かせ、これには大泉も「いいですねえ」とノリノリ。また菅野は「カブトムシの幼虫を成虫にしたい」と話して周囲の爆笑をさらい、大泉は「アカデミー賞を獲れたらすばらしい。日本の映画で、海外のすばらしい賞をいろいろな方が獲りますが、ああいう作品が作れたらいいなと思います」と未来を見つめ、「私が真面目な話をしたらダメですか?たまにはいいじゃないですか」とぼやきつつ「バディもので。バディ、募集中!」と宣言して会場から大きな拍手を浴びていた。

本作の宣伝活動中には、実際にバルーンカテーテルによって命を救われた少年を持つ家族が試写会に訪れたそうで、この日のステージには少年の母親から手紙が届いた。「映画の間、涙が止まりませんでした。息子を助けてくれた医師、看護師、医療従事者の方には何度も『ありがとうございます』と伝えてきました。しかし医療機器やバルーンカテーテルに対して、ありがとうと思ったことはありませんでした」「バルーンカテーテルというバトンを、時を経て確かに受け取りました。『息子の命を救ってくださり、本当にありがとうございました』と映画を観て思いました」など心のこもった言葉が詰まった手紙に、代読した菅野も思わず涙。「そのおかげで助かる方がいる。本当にすばらしいこと」とモデルとなった家族の成し遂げたことに胸を熱くした大泉は、「この映画は、娘を亡くしてしまった家族の話ではないんだなと思った。新しいことを始めたい、こんなに誰かのためになにかをしたいと思わせてくれる映画はない。なにか悩んでいたりする人の背中をドンと押してくれる映画」と力強く語っていた。

取材・文/成田おり枝