9人が立候補した衆議院・東京15区の補欠選挙は、立憲民主党の新人で元江東区議会議員の酒井菜摘さんが初当選を果たしました。小池知事が何度も応援に入った乙武洋匡さんは約3万票差で破れました。

東京15区の補欠選挙は、自民党が候補者の擁立を見送る中、立候補した9人が12日間にわたり論戦を展開し、4月28日に投票が行われました。

投票の結果、酒井菜摘さんが4万9476票で当選。選挙戦では自民党派閥の裏金事件への批判を訴えたほか、防災対策をはじめとする江東区が抱える課題に国政でも取り組んでいくと強調していました。

酒井氏:「真っ当な政治を実現していきたい。(区民からは)とにかく多かったのは、しっかりしてねという期待とともに、政治家に対する怒りや、これから変えていかなければならないという区民のみなさんの思いだったと思う」

2万票差の2万9669票で次点となったのは、前参議院議員の新人で今回、無所属で出馬した須藤元気さんです。自転車で選挙活動を行うなど費用のかからない選挙活動を掲げ、選挙戦を駆け抜けました。

須藤氏:「正直、自分の出せる手持ちの技は全て出し切ったと思う。自分の政治家としての旅の途中だと思っています。これから精進して江東区民、そして日本をよくしていくために頑張っていきたいと思います」

須藤さんが得票を伸ばした要因について、番組コメンテーターでジャーナリストの鈴木哲夫さんは、政治への不信感が募る有権者の受け皿になったと指摘します。

鈴木哲夫さん:「まさにこれは政治不信ですよね。どこに投票するじゃなくて、政治自体がどうしようもないねという空気になってくる。そういうものの受け皿として、須藤さんのようなポジションの人に票が言ったという可能性はありますよね」

日本維新の会の新人で「教育無償化を実現する会」が推薦した金澤ゆいさんは、次点と約1200票差でした。

金澤氏:「想像以上に、政治不信が地域で広まっていて、そもそも投票に行かない、投票に行きたいという気持ちが起きないという所に関して、もう少し地元の方々と対話を重ねる必要があったと思っている」

日本維新の会 馬場代表:「立憲民主党の国会議員を何人増やしても一緒。立憲民主党には投票しないでください」

選挙戦で日本維新の会は、特定の政党名を挙げて批判する演説も目立ちましたが、選挙を終えて「実力の差を認識した」と結果を振り返りました。

日本維新の会 藤田幹事長:「全国的に立憲民主党と私たち維新の会には、今日示されたように実力差があるということを認識したし、これからこれを糧にどれだけその差を縮められるかという戦いになると思う」

無所属の新人で、国民民主党と地域政党が設立したファーストの会が推薦した作家の乙武洋匡さんは、小池知事が毎日のように応援に入りましたが、当選者と約3万票の差がつきました。

乙武氏:「この選挙戦、小池知事はじめファーストの会の皆様、玉木代表をはじめ国民民主党のみなさま、そして多くのボランティアスタッフのみなさまに支えてもらいながら、こうした結果になったこと本当に深く責任を感じているし、ただただ私自身の力不足ということで責任を感じてる」

今回の補欠選挙の投票率は40.70%で、前回の衆院選より18.03ポイント下回り、過去最低でした。

東京15区の補選は、立憲民主党の酒井さんが当選しましたが、今回、小池知事が後押しした乙武さんは、酒井さんに約3万票の差をつけられる結果となりました。

目黒区長選に続き、小池知事が応援する候補が敗れ、「選挙に強い」小池知事の影響力が低下したという見方もできますが、番組コメンテーターの鈴木哲夫さんに伺ったところ、影響力が低下したわけでなく、乙武さん自身の評価と、知事の学歴問題が告示前に出たことが影響したと見ていて、7月の知事選に向けた知事の今後に関わってくると指摘しています。

そして、今回の選挙では各陣営から「選挙妨害」だと訴える声が多く上がった選挙でもありました。別陣営の街頭演説中に、近くで大音量の演説などをするものでした。

こうした行為を選挙期間中、江東区内の至るところで行っていたのが、補選に候補者を擁立した政治団体「つばさの党」です。候補者の根本さんや黒川代表らに対しては、警視庁が、告示日に別陣営の街頭演説中に、近くで大音量の演説をするなどした行為が、選挙の自由妨害を禁じた公職選挙法に抵触するとして、2日後に警告を出していたことが分かりました。では、選挙妨害という指摘をどう思っているのか、根本さんに聞きました。

根本氏:「そういう批判があるのはもちろん、ぼくも一般的な感覚を持っていますから、普通に何も知らない人が見たら、なんかやばい奴らがと思うのは当然かなと思う。警察がすっ飛んでくるようなことは我々はしていないという認識ですので、悪いことをしている気も僕はないですし、一応、総務省とか警察署に確認してから僕ら一応やっているんですよ。こういう確認のもとやっているというのはみなさん理解してほしいと思います」

つばさの党は、正当な政治活動だとし、7月の都知事選でも、同様の活動を行うと表明しています。

そして、自民党の裏金事件や政治とカネの問題などに端を発して行われた今回の補選は、東京以外の長崎と島根でも行われ、自民党は、不戦敗2つを含め、全てで敗れました。一連の選挙結果は岸田首相の政権運営に大きな影響を与えるとみられ、衆議院の解散は遠のいたとみる声もありますが、鈴木さんは「国会会期末の6月末に解散に踏み切る可能性が高まった。岸田首相が2期目を目指すなら解散しか手がない」と分析しています。