諏訪市大手2の信濃ビルに昨夏から衣料品店が相次ぎオープンし、専門店3店が集積するファッションビルとして新たなにぎわいが生まれた。ビルの建設から45年を経て、当初目指した商業テナントの集合がかない、各店の強い個性と幅広い世代の集客で街なかを活気づけている。

 同ビルは割烹料亭信濃の敷地一部を再開発した5階建て。当初計画では1、2階に商業系、3階以上に事務所系のテナントを集める予定としたが事務所の需要が強く、オフィス中心の運営が長らく続いた。近年は1、2階に空き物件も出ていた。

 1階で営業する女性ファッション専門店のブティックKAMO(カモ、鴨志田明子店長)は創業52年、同ビルでの営業は28年となる老舗で、ミセスを中心に80歳代まで幅広い女性客をつかんでいる。そこへ昨夏、2階に男女のカジュアルファッションと紳士服の受注仕立てを手掛ける「Jack&Fiere(ジャックアンドフィーロ)」(本社富士見町、香西勝仁社長)、昨年末には1階に古着・古本などの販売とバーの複合店舗「頬杖」が出店した。

 「Jack−」は山梨県北杜市内の大型ショッピング施設から移転進出した。質と着心地の良さにこだわった国内外の衣料を扱い、大人の普段着とセミオーダーのスーツという諏訪地方に数少ないジャンルで特化している。

 「頬杖」は都内と県内で2拠点生活をする今井一帆さん(31)=茅野市=と、佐藤智哉さん(22)=南箕輪村=が共同経営し、ファッションと飲食をつないだユニークな営業を展開。若者世代を中心に県内外から客を集めている。

 大型チェーン店を除いては、市内で衣料用品の個店が集積するファッションビルは2014年まで駅前にあったスワプラザ以来。ビルを経営する信濃の役員、小松まやさんは「当初計画のにぎわいが実現でき、雰囲気が明るくなった」と喜び、各店主も「それぞれの店の個性でお客さんを呼び合える」(香西さん)と相乗集客への期待が上がる。

 鴨志田さんは「同業者が集まると自然と華やぐ。幅広い年齢のお客さんがビルに出入りするようになり、買い回りの人も増えた」と効果を語り、今井さんは「店舗間の仲が良く、協力し合えて安心感がある。都心では難しい衣料販売とバーの同時展開という新しい挑戦もできた」と話す。

 おしゃれの感度が高い人が多い―と店主たちが称する諏訪にあって、古い商業エリアへの客足の呼び戻しにひと役買い始めている。「頬杖」の佐藤さんは、「地域に根付いた店に育てて、都内で得た経験とセンスを郷里に広げたい」と意気込んでいる。