国営諫早湾干拓事業を巡り、坂本哲志農林水産相が12日に営農状況などを把握する現地視察を予定していることが9日、複数の関係者への取材で分かった。ただ、歴代農相が視察で実施した開門派漁業者らとの面会は予定されていない。
 関係者によると、坂本農相は12日午前に佐賀県有明水産振興センター(小城市)で有明海再生に向けた取り組みを視察する。その後、昼前に諫早市に入り、諫早湾干拓調整池の排水操作方法や干拓地の営農状況を確認する。本県では、大石賢吾知事らが案内する予定という。
 歴代農相による現地視察は福岡高裁が国に開門を命じた確定判決(2010年)以降行われ、22年10月の野村哲郎氏以来。前任の宮下一郎氏は政治資金パーティーの裏金問題で交代し、実現しなかった。最高裁が23年3月、開門確定判決の執行力排除を認め、司法判断が“非開門”で統一されて以降、初の視察となる。
 開門確定判決の原告漁業者らや弁護団との面会は、これまでの視察で実施されてきた。馬奈木昭雄弁護団長は取材に「農相はわれわれの話も聞かずに、何のために来るのか」と批判した。