「2024年問題」を見据え、日鉄興和不動産など4社がロボットの活用によって集合住宅内での荷物搬送の課題解決を図るプロジェクトに取り組んでいる。高層マンションの入り口から各住戸まで荷物を配達する実証実験を実施。屋内でのロボット走行の有効性と課題や配達員の負担軽減の検証に加え、ビジネス面についても可能性を探っている。

実証実験に参加したのは、日鉄興和不動産、ソフトバンクロボティクス(東京都港区)、日建設計、日建ハウジングシステム(同文京区)。経済産業省の「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」の一環で行った。

4社がタッグを組む背景にあるのが、物流・運送業界に時間外労働の上限規制が適用される2024年問題。宅配荷物のニーズは年々増加傾向にあり、配達の手間をどう削減するかは、業界全体の大きなテーマとなっている。

特に対応が難しいのが首都圏に約880棟あるとされる大規模集合住宅で、セキュリティーが厳しく荷物を届けるまで約30分を要するとの報告もある。宅配ボックスの設置など、これまでの対策だけでは改善が見込みにくい。このため「新しい取り組みが期待されている」(日鉄興和不動産住宅事業本部の鈴木英太氏)と判断、ロボットの導入による解決策を探ってきた。

東京都江東区の高層マンションで行った実証実験では、ロビーから各部屋までの「ラストワンマイル(目的地までの最後の距離)」にロボットを活用。食べ物を玄関に設置したロボットに積載し、住民宅までスムーズに運べるかを検証した。配送業者がマンション内に入らず配送することで作業の軽減効果を狙っている。

日建設計デジタル推進グループの光田祐介氏が「横展開を視野に入れている」と語るように、今後はさまざまなマンションで同様にロボットを導入するため、具体的な課題と解決策を探る。さらにコンサルティングやサービスなど各社が事業展開を見据えて検討を進める計画だ。