大手商社7社の2024年3月期連結決算(国際会計基準)が8日出そろい、5社が当期減益だった。円安が海外利益の円換算値を押し上げたが、資源高の落ち着きが収益を圧迫した。ただ過去の投資案件の収益貢献や資産入れ替えによる下方耐性の強化が奏功し、利益水準はコロナ禍前に比べおおむね2倍前後に切り上がっている。各社は脱炭素やデジタル化など次の成長ステージに向けて投資を活発化する。

大手商社の連結当期利益

伊藤忠商事が8日発表した24年3月期連結決算は、当期利益が前期比0・2%増の8017億円だった。石炭市況が悪化したが、人流回復による食品事業の取引拡大などがプラスに寄与した。

25年3月期当期利益は同9・8%増の8800億円と過去最高を見込む。完全子会社化した伊藤忠テクノソリューションズのデジタル変革(DX)関連サービスなどが貢献。年間1兆円を上限とする成長投資では「DXで(消費者に近い)川下の事業領域が広がる投資などをしたい」(石井敬太社長)とした。

三井物産は24年3月期当期利益が同5・9%減の1兆636億円。成長分野へのシフトに向けた投資先企業の売却益が下支えとなり、過去2番目に高い当期利益となった。

25年3月期は前期に計上した売却益の反動で同15・4%減の9000億円を見込むが、低炭素のガス火力や機能性食材など注力分野の投資案件の収益貢献が進行。25年3月期も年間1兆円規模のキャッシュフローを見込み、「早期に収益貢献する案件と長期収益基盤に資する成長投資をバランスよく実行する」(堀健一社長)とした。

三菱商事も24年3月当期利益は同18・4%減の9640億円だが、過去最高の前期に次ぐ水準。総合素材や電力など5分野で過去最高益を更新。稼ぐ力が高まり、25年3月期は同水準の9500億円を見込む。

次の成長ステージに向けては豪雨被害のあった豪州の原料炭事業の操業安定化のほか、次世代エネルギーや重要鉱物への投資の検討・実行を進める。KDDIとの共同経営に移行するローソンなど「柔軟な資本政策も実行して成長戦略を推進する」(中西勝也社長)とした。

ただ円安に伴う海外投資の負担増に加え、地政学リスクの高まりで経済環境は不透明化している。「足腰の強い案件への投資や事業の(地理的な)分散が大事」(三井物産の堀社長)となるなど、慎重な投資判断も求められる難しい局面に差し掛かっている。