東海大学はキャンパスを越えて研究機器を遠隔操作する全学システムの方向性を固めた。数少ない装置を離れた研究室から操作したり、技術職員が支援したり、メーカーのエンジニアが補修の助言をしたりする。日立ハイテクとの実証試験で、データのクラウド管理を含めて課題を抽出した。将来は同一システムで装置メーカーを越えて保守管理したり、地元企業など外部の遠隔利用を推進したりする計画だ。

全国主要5キャンパスに23学部を持つ東海大は、全学の機器共用が他大学より進んでいる。2023年に日立ハイテクほか同社グループ2社と協定を結び、産学約30人ずつが参加する実証プロジェクトを始めた。

具体的には、ある研究者が別キャンパスにある走査型電子顕微鏡を、リモートシステムで操作してサンプル測定をし、取得データをクラウド上で管理する日立ハイテクの「ExTOPE(エクストープ)」に保存。研究者と、遠方に常駐する学内技術職員が連携して、データ分析するといった形だ。

1年を経て、対象の装置や事例を拡大する上での課題を絞り込んだ。ニーズが高いのは、メーカーエンジニアの行き来の時間とコストを削減する保守点検だ。遠隔で稼働させながらの故障部分の確認や、現場の技術職員に対する部品交換の助言など、どの程度が可能か詰める。企業秘密がある他メーカーの装置の保守も、同社システムを使いながらできないか検討する。

もう一つは地元企業など外部から利用する場合の環境整備だ。高度物性評価施設など中心となる3施設でまず、バラつきのある使用料を汎用機で統一する。データ解析に大学の専門知見を加え、共同研究に導く仕組みも確立する。また競争的研究費獲得につなげる基礎研究強化、産学連携、臨床データ測定の充実など各施設の特色を生かした高度化も進めていく。