今や出会いの手段として定番化したマッチングアプリ。「Pairs」や「with」、「タップル」など一度はCMで聞いたことがあるアプリも多いが、実は海外に目を向けるとまだまだオモシロい機能を持つ、“変わった”マッチングアプリが存在するという。
 今回は2022年からイギリス・ロンドンで暮らす20代人妻、深田エリィ氏が「ロンドンでマチアプ無双してみた結果」についてお伝えする。「Bumble」「Hinge」「Pure」といった(おそらく)日本では認知されていないマッチングアプリを駆使して出会ってきた幾多の男性たちの実情や、日本と海外で大きく異なるデート観なども紹介したい(以下、深田氏寄稿)。

◆GAFA勤務のエンジニアが目指すもの

 2年程前にロンドンに来てから、Tinder、Bumble、Hinge、Pureなどのマッチングアプリで、いろいろな男性たちとデートしてきました。その中で出会った男性たちの実態やイギリスと日本のデーティングカルチャーの違いについて紹介します。

 イギリスでは、TinderやBumbleと並んでHingeというアプリが人気です。このアプリはTinderなどのカジュアルなアプリに比べ、真剣な交際を求めている人が多いといいます。私も今年に入ってから数か月程試しに使ってみました。

 このアプリで最近出会ったのが、GAFA勤務のエンジニアです。世界大学ランキングトップ10の大学でコンピューターサイエンスを学び、現在はGAFA勤務。その傍ら友達と設立したスタートアップのIPOを目指しているのだとか。

◆自分よりも小柄な女性を積極的に探すワケ

 このエンジニアに女性のタイプを聞いたところ、いくつかの条件の中にダークヘアであること、自分より背が低いこと、などを挙げていました。

 日本人女性としてイギリスでいろいろな男性に会っていると、この二つの条件にはよく出くわします。「俺、ブロンドよりも黒髪が好きなんだよね」。金髪よりも暗い髪色が好きな男性が一定数いる模様です。

 また「自分より背が低い子がいい」もよく聞きます。GAFAのエンジニアは身長175センチ。日本の基準では決してチビではありませんが、イギリス人男性の平均身長は178センチ。ロンドンには欧州から来ている男性も多く、190センチ以上の男性に出会うことも珍しくありません。女性の平均身長も165センチはあります。小柄なイギリス人の友人が「イギリス人は身長にこだわる人が多い」と嘆いていましたが、こうした中で自分より小柄な女性を積極的に探そうとするのも不思議ではありません。

◆六本木ヒルズも霞むタワマンに住む弁護士の「悩み」

マチアプ無双 マジック・サークルのひとつである大手法律事務所(NetflixのSuitを思い浮かべてもらえればいいと思います)に勤める弁護士も同じことを言っていました。この人は、オックスブリッジを卒業後、ロンドンのカナリーワーフという金融の中心地で弁護士として働き、六本木ヒルズが霞んで見えるようなタワーマンションに住んでいる人でした。顔立ちも整っており、話も面白くていかにもモテそうですが……。そんな人生の“勝ち組”でも乗り越えられないのが“身長”なのかもしれません。

 でも自分より小柄だからといって、近づいてこられても困りますよね。私だって背が高い人のほうがいいです。しばらくデートしていたGAFA勤務のドイツ人男性が身長191センチですっかりそれに慣れてしまったため、今では180センチでも物足りなく感じてしまうようになりました。身長も高ければ、アソコもデカい。最高です。同じくGAFA勤務のエンジニアも東欧出身だからか、背は高くなくてもガタイがよくて、アソコが私の手首より太かったです。

 ちなみに私は身長160センチ。ジムにも週3回以上通っており、日本にいるときは小柄と言われたことはありませんでした。しかしこちらでは「Petite」=ちっちゃいという扱いです。靴のサイズもヨーロッパ人男性の半分以下で「ちっちゃくてキュート!」という扱いになります。背が高くて悩んでいる女性には欧米に行くことをおススメします。

◆ONS、FWB…“専門用語”が飛び交うアプリ

 Hingeは比較的真剣交際を求める人が多いアプリでしたが、Pureは逆にワンナイトラブやセフレ募集に使う人が多いアプリです。Hingeと違って、「趣味は何?」「仕事は何しているの?」などのつまらない会話はすっ飛ばして会う約束をし、お互いに気に入れば初対面でそのままセックスします。マジック・サークル勤務の弁護士に会ったのもこのアプリを通してでした。

 このPureにはさまざまな“専門用語”が飛び交っています。

ONS:One Night Stand ワンナイトラブ
FWB:Friends with Benefits いわゆるセフレのことです。
BWC:Big White Cock アソコがでかい白人のこと。バリエーションにBBCがあります。
NSA:No Strings Attached 後腐れない関係を求めているときに使う
MBA:Married but Available 結婚しているけれども遊んでいるときに使う
ENM:Ethical Non-Monogamy パートナーはいるが、他の人とも関係を持つことをパートナーが合意している場合に使う

◆いきなり「局部写真」を送ってくる男性が

マチアプ無双 このアプリを始めたとき、私がプロフィール欄に「背が高くてブロンドでアソコがでかい人がいい」みたいなことを書いていたからでしょうか。「俺のどう?」と言わんばかりにいきなりアソコの写真を送ってくる人がめちゃくちゃ多かったです。このアプリは課金するとマッチしなくても相手にメッセージや写真を送ることができます。しかも写真は一度表示されると数秒後に消えて二度と表示できなくなるうえ、アプリ全体がスクリーンショットできない仕様になっています。ヌード写真の交換に優れたアプリと言えますね。そのためか、いきなり写真を送ってくる人も多く、ほんの数日のうちに10本以上見たのではないでしょうか。

 中には40代の男性もいて、「一回り以上年下の相手にいきなりアソコを送るなんてどんな神経してるんだろう(しかも大したことないし(笑))」と思っていました。40代女性が20代の男性にいきなり局部の写真を送ったら頭のおかしい人なのに、その逆は成立する(していませんが)のが解せません。

 なおイギリスの名誉のために付け足しておくと、イギリスではオンライン安全法が制定され、相手の同意なしにヌードの写真を送り付けることは法律で禁止されています。Pureでも同意していないのにヌード写真を送られた場合、運営に通報することができるようになっています。

◆日本人男性ももっと頑張ってほしいこと

 日本には今でも「女性は料理が得意でなければならない」という空気があると思います。たとえ口にはしなくても、相手が“手料理”(って気持ち悪い言葉ですね)を期待しているのがなんとなく伝わってくることはよくありました。

 こちらではむしろ男性が料理上手であることをアピールしている印象があります。アプリのプロフィール欄に「君のために料理するよ」と書いている人も多いですし、長くデートしているイギリス人男性もいつも自宅で手料理を振る舞ってくれます。しかもそのクオリティが高く、とんかつなどの難易度の高い料理も作ってくれます。世界の一大事を左右するような仕事をしている男性ですらディナデートのために進んで料理をしてくれます。日本人男性ももっと頑張ってほしいですね。

 私もロンドンで暮らし始めた当初はアピールポイントになるのかなと思って「料理するの好きだし、作ってあげるよ」という感じを出していたのですが、いまいちアピールできている気がしませんでした。

 むしろ料理をしたり、相手の部屋の掃除をしたりするというのは、する方もされる方も男女ともに自立していないと思われる、というのが私の抱いている印象です。

 かといってヨーロッパは男女平等!と言いたいわけでもありません。日本にいたときはヨーロッパは男女平等だから賃金格差も小さく、デートも割り勘、と聞いていましたが、実際にはみんな奢ってくれます。

◆「恋人」前からセックスするのはごく普通のこと

 日本では恋人とセフレをはっきりと分けることが多いと思います。インターネットにも「付き合う前にセックスするとセフレになってしまい、恋人になれない」といった話が転がっています。

 しかし欧米では、はっきりと「恋人」になる前からセックスするのはごく普通のことです。デーティングアプリで会い、お互いに気に入ればその後もデートやセックスを続けますが、この状態は単なる「see」という状態。こちらでは誰かとデートしているかどうか聞くときに「Are you seeing somebody?」と聞きます。

 この時点では、相手が他の人ともデートやセックスをしているかもしれませんし、逆にこちらも他の人とデートすることができます。

 もしお互いに気に入って「他の人とデートしてほしくない」と思って初めて、「exclusive」=排他的な関係に移行します。どれくらいの期間を経て1対1の関係になるのかは人によります。

 さらに真剣な交際は「relationship」と呼ばれます。「relationship」が何を指すのかも人によるようですが、例えば「相手のことを人生設計に組み入れる」などがrelationshipになってきます。

◆お互いに何を求めているかは話し合う

 日本のデーティングカルチャーについて聞きかじっている人もいて、「日本ってデートして数回で告白して付き合うって本当?」と何回か聞かれたことがあります。こちらの感覚では、デートして数回で交際=relationshipに移行するのはかなり早いのです。

 こちらのデーティングカルチャーについて感じるのは、それぞれが自分の求めていることをきちんと言語化して、相手とすり合わせていく必要があるということです。カジュアルなデート相手がほしいのか、真剣な交際を求めているのか、カジュアルな場合でも1対1がいいのか、といったことを言語化して相手に伝える必要があります。

 告白して付き合って、付き合っているならこういうことをして、しばらくしたら結婚して……といった約束事がないので、それぞれが何を求めているのか相手と話し合う必要があるのです。

<TEXT/深田エリィ>



【深田エリィ】
国立大学を卒業後、出版社など勤務を経て現在はロンドンの某シンクタンク系企業に勤務。旺盛な好奇心で現地の人たちと国際交流を図っている