外国為替市場で対ドル円相場の乱高下が続いている。

 4月末に一時1ドル=160円台を付けた円相場はその後、154円台に急反発。しかし、再び157円台で取引されていたかと思いきや、5月1日のニューヨーク外国為替市場では1ドル=153円台に急騰した。2回にわたる突然の「円高」の背景として政府、日銀による為替介入の可能性が指摘されているが、日米の政策金利差が変わらない限り、円安基調は変わらないだろう。

 このまま円安が進めば影響を受けるのが食料だ。農林水産省が公表した2022年度の食料自給率を見ると、「カロリーベースの食料自給率」は38%、「生産額ベースの食料自給率」は58%で、世界各国と比べて輸入食料(原材料含む)に依存している割合が高い。

 民間調査会社の帝国データバンクは5月から値上げする飲食料品が417品目になると発表。平均値上げ率は31%で、値上げが本格化した2022年以降で最も高くなったが、円安が進行すればさらなる値上げは避けられない。

 さらに日本の食卓を脅かしているのが、世界的な異常気象だ。最近、オレンジジュースがスーパーの売り場から消えつつあることが報じられているが、これは主要輸入国であるブラジルが天候不良で、オレンジの生産量が激減。価格高騰に円安が拍車を掛け、安定的に原料を確保することが難しくなったためだ。このまま円安と異常気象が重なれば日本の食はどうなるのか。

■岸田首相は「いま日本においては30年ぶりに経済の明るい兆し」と投稿

 農林水産省作成のパンフレット『いちばん身近な「食べもの」の話』には、「食べものの輸入は突然、止まることがあります」として、その要因について「冷夏などの異常気象」「作物の不作」「輸出国で価格高騰」などを挙げている。

 まさに今の「異常気象」と「価格高騰」なのだが、注目は「不測時の食料安全保障マニュアル」と題し、仮に輸入食料がストップした場合に国内で自給できる食料を使ったメニュー(1日1人当たり)の例だ。

 それによると、「朝食」は「茶碗1杯のごはん=75グラム、じゃがいも2個=300グラム、ぬか漬け1皿」、「昼食」は「焼き芋2本=さつまいも200グラム、じゃがいも1個=150グラム、リンゴ4分の1=50グラム」、「夕食」は「茶碗1杯のごはん=75グラム、焼き芋1本=さつまいも100グラム、焼き魚の切り身=84グラム」。これに「2日に1杯のうどん」「2日に1杯の味噌汁」「3日に2パックの納豆」……などとあるのだが、こんな事態になったら最悪ではないか。

 政府、日銀は円安を傍観せず、総力を挙げて対策に取り組んでほしいが、肝心の司令塔である岸田文雄首相(66)は自身のXで、《いま日本においては30年ぶりに経済の明るい兆しが出てきました》などと投稿していたから、不安を覚える国民は少なくないだろう。