【小池百合子と学歴詐称】

 国際政治学者・舛添要一(下)

 2人が知り合ったのは41年前。ともに30代だった。東京都の小池百合子知事はエジプトから帰国後、疑惑を招く「カイロ大学文学部社会学科首席卒業」という特異な経歴を引っ提げ、キャスターから政治家に転身。権力の階段を駆け上がった。因縁の間柄と言える国際政治学者の舛添要一氏は、4つの理由で政界引退を勧告する。

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「ハッキリ言って、彼女が持ちこたえたのは何もやらないから。私が嫌われたのは、いろんなことをやり過ぎたから。それで役人に煙たがられた」

 舛添氏は先代の都知事。30年周期で繁華街をリノベーションする都市計画を構想し、防災対策にも注力した。水害による広域避難に備え、江戸川を挟んで県境を接する千葉との間に3本の橋を架ける立案をしたが、辞職でパーになった。

「彼女は都市計画も防災対策も関心がない。国際金融にも興味がない。票につながる時だけ動く。築地市場移転を引っかき回し、豊洲移転を遅らせた。東京五輪の会場変更騒動もそう。いずれも私が知事時代に調べ上げて結論を出したのに、パフォーマンスに利用した。8年前の選挙公約『7つのゼロ』で達成したのは『ペット殺処分ゼロ』だけです。上昇志向の強い人だから、都知事は最終目標ではない。国政に復帰して首相になりたい。踏み台で下手を打って、私みたいに失脚したらまずいわけですよ。何もしないのが一番いい」

 しかし、小池の野望はついえた。子飼いを擁立した目黒区長選、子分を担いだ衆院東京15区補選は大惨敗。神通力の喪失は隠しようがない。

■国政復帰は国家リスク

「学歴詐称疑惑を鎮火させるため、20年に駐日エジプト大使館が卒業を認定するカイロ大声明をSNSで発信しました。彼女はエジプトに大きな借りをつくった。外交は国政です。彼女が国会議員になり、大臣になったらエジプトの意向を無視できなくなる。パレスチナ自治区ガザでの戦闘休止をめぐり、エジプトは仲介交渉を担っています。日本の見解を求められた場合、エジプト寄りの意見を言わざるを得なくなる。国政復帰は日本にとってリスクでしかない」

 そうでなくても、小池が再選を果たして以降、都はエジプト関連予算を増額。少なくとも22年までに計9700万円を費やしている。行き場を失った小池の基本路線は、しがみつき3選だ。

「この先4年間、都政で何を実現したいのか? それが全く見えないのですから、東京で暮らす人、働く人にとっても3選はプラスにならない。学歴詐称は公選法(虚偽事項公表罪)に違反しますが、3年の公訴時効は成立している。卒業証書などを偽造した場合、時効7年の公文書偽造、時効5年の私文書偽造に問われる可能性があるものの、あと3年静かにしていれば乗り切れる。昔の友人として言えば、政界をキッパリ引退した方がいい。これ以上、傷つかない方がいい」

(坂本千晶/日刊ゲンダイ)

▽舛添要一(ますぞえ・よういち) 1948年、福岡県生まれ。東大法学部政治学科卒。東大教養学部政治学助教授などを経て、舛添政治経済研究所を設立。国政では参院議員2期、厚労相を務めた。2014年に都知事就任、16年辞職。