今国会の会期末まで残り1カ月。衆参両院では連日、各委員会で改正(改定)法案などの審議が大詰めを迎えつつあるが、そんな中、野党議員から「大臣更迭に値するのではないか」と怒りの声が上がったのが参院農林水産委員会だ。

 同委員会では「農業政策の憲法」と言われる「食料・農業・農村基本法」について四半世紀ぶりの改正(改定)案を審議中だ。

 生産資材が高騰する中で農業経営をどう安定させるのか。世界的な気候変動やロシア軍によるウクライナ侵攻などを背景にした食料の調達リスクにどう備えるのか(食料安全保障の確保)。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で政治資金規正法改正案ばかりに注目が集まるが、日本の農業の将来を左右しかねない重要な議論なのは言うまでもない。

 コトの発端は16日。質問に立った立憲民主党の徳永エリ議員(62)が「基本法改正では生産基盤を強化とあるが、どう強化していくのか分からない」と切り出し、その理由として、農業従事者の高齢化や担い手不足などを指摘した。すると、答弁に立った坂本哲志農水相(73)は、「私は(日本農業の)生産基盤が弱体化したとは思ってない」と反論したのだ。

■日本の農業は、大臣がこんな認識で大丈夫か?

 経団連などの資料によると、国内の農業経営体の96%を占める個人経営のうち、世帯員である基幹農業従事者は2020年に136万人となり、20年前と比べて104万人も減少。20年時点で農業従事者全体における65歳以上の割合は7割に上り、20年前に483万ヘクタールあった農地面積も437万ヘクタール(20年)と1割も減少した。

 食料自給率も減少傾向が顕著で、誰がどう見ても、日本の農業の生産基盤は弱体化していると指摘せざるを得ないだろう。そもそも弱体化しているからこその改正案ではないのか。

《大臣がこの認識で大丈夫なんか、日本の農業》

《農水相が「弱体化したと思っていない」と。でも、耕作放棄農地が増えているよ》

 SNS上でも批判の声が上がり、坂本大臣は23日になって、同委員会で「私の認識に誤りがあった」として16日の発言を撤回、謝罪したが、認識をただすためにも一度、農家を対象に「車座集会」を開いて意見を聞いた方がいい。