【メジャーリーグ通信】

 メジャーは3月28日に本格的なシーズン開幕を迎えたが、日本では依然として大谷翔平の専属通訳でドジャースの球団職員だった水原一平氏の違法賭博問題に関する報道があふれている。

 水原氏は違法なスポーツベッティングにはまって7億円近い負債ができ、それを極秘裏に大谷の口座から支払ったため、遠征先のソウルで解雇された。すでに米国の司法当局の捜査が始まっており、それが終わり次第、金額が大きいため、刑事裁判の被告人になり実刑判決を食らう可能性が高い。

 MLBでは2010年以降、球団の職員が重大な不正を働いて解雇され、裁判で実刑判決を受けたケースが何件もある。

 19年7月1日にエンゼルスのローテーション投手だったタイラー・スキャッグスが遠征先で、禁止薬物であるフェンタニルの過剰摂取で急死する事件があった。その後の捜査で違法薬物はエンゼルスの職員で広報ディレクターを務めていたエリック・ケイから供給されていたことが判明。ケイは解雇されただけでなく、起訴されて刑事裁判にかけられ22年10月に懲役22年という凶悪殺人犯レベルの判決を受けた。

 15年にはカージナルスのスカウト部長を務めたクリストファー・コレアが、古巣・アストロズのコンピューターにハッキングして度々、重要データを盗み出していたことが発覚。球団から解雇、警察に逮捕され、裁判で3年10月の実刑を宣告された。

 ホワイトソックスでスカウト部門の中南米担当責任者だったデービッド・ワイルダーは04年から08年にわたり2人の現地スカウトと共謀して、実際に現地で選手たちに支払った契約金より、ずっと高い金額を球団に請求。40万ドル余りを不正に得て解雇され、裁判で懲役2年の実刑判決を受けた。

 11年にはメッツで27年間、用具係やクラブハウスマネジャーを務めた55歳のベテラン職員チャールズ・サミュエルが、球団の貴重品倉庫から200万ドル(約3億円)相当の記念グッズや有名選手のサイン入りバットなどを盗み出していたことが発覚。ニューヨーク市警に逮捕され裁判にかけられたが、親しかった選手たちが弁護側証人としてサミュエルの人柄を称賛して裁判官に情状酌量を訴えたため、実刑を免れ5年の保護観察処分を申し渡されただけで済んだ。

 水原元通訳は人柄がよく、エンゼルス時代、最高の通訳と評価され、親しい選手が何人もいたので、今回の事件の裁判が始まれば、彼らが弁護側の証人となって出廷し情状酌量を訴えることが予想される。

(友成那智/スポーツライター)