フィギュアスケート女子で世界選手権3連覇中の坂本花織(24)が7日、所属するシスメックスの陸上部との合同練習会に参加した。朝の氷上練習を終えると、神戸市内の同部の施設を訪問。標高3000メートルの“富士山級”の酸素濃度に設定された低酸素室での走り、トレーニングマシンを利用した脚の動きの確認など、普段と違う学びを得た。

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坂本は4年前の日々を思い返していた。

「懐かしい、この道…」

新型コロナウイルスが急拡大した2020年春。拠点のリンクが閉鎖され、関わりが生まれたのが陸上部だった。週3回、シスメックスの陸上部員と練習を積み「みんな滑れていない状況は同じ。頭ひとつ出るには『今が踏ん張り時やな』って思った」とコロナ禍でも成長を続けた。その意欲的な姿勢は、22年北京五輪銅メダル、世界選手権3連覇へとつながっていった。

「その時に教えてもらった走りが、今のベースになっています。陸上部の皆さんに出会う前の走り方と、今では全然違います」

世界選手権4連覇が懸かる7月からの新シーズンを前に、この日、再び交流する機会を得た。

懐かしい道を進むと、陸上部の施設で出迎えを受けた。自然と笑顔になった。

23年神戸マラソン優勝、16、17年大阪国際女子マラソン2位の堀江美里(37)を中心に助言を受け、室内トレーニングが始まった。

インナーマッスルで脚を運ぶ動きが学べるマシン「カンド君」では、堀江から「脚がみぞおちから生えているイメージで」とアドバイスされた。徐々にコツをつかむと、左右の脚の動きがスムーズになっていく。周囲に驚きの声が漏れた。

続いては低酸素室でのトレーニング。標高3000メートルの酸素濃度に設定されており、パルスオキシメーターで坂本の酸素飽和度を測ると95%(基準範囲は96〜99%といわれる)だった。バイクをこぎ、さらに91〜92%まで下がっていった。

「酸素が薄いところにはかなり弱いので、結構、恐れていました」

そう苦笑いしながらも、メニューは続く。トレッドミルでのジョギングでは、走行中に自身の着地の状況を前方のモニターでチェック。堀江からは「腰が落ちなくて、接地も真っすぐ」と太鼓判を押され、坂本は「アドバイスをもらえて、コロナ(禍)の時のトレーニングを思い出しました!」と刺激的な時間だった。

最後は全部員と昼食をともにし、競技の枠を超えた交流を楽しんだ。

自身は8月、中野園子コーチに指導を受けるメンバー恒例の盛岡合宿に参加する。毎年、ホテルからリンクまではランニング。片道約2・5キロを走り、氷上練習後に同じ道を走って帰る。欠かせない土台作りで、シーズン本格化に備える。

「陸上部の皆さんの『また来てくれてありがとう!』という雰囲気が、すごくうれしかったです。今日が夏に走るための練習。いいきっかけになります。走る時、どうしても肩に力が入ってしまう。それが演技に出る時もあるので、直していきたいと思っています」

充実した心身で、走り込む夏に向かう。【松本航】