1人で暮らす高齢者が増える中、頼れる親族などのいない高齢者の生活の支援や死亡後の葬儀や納骨などまで幅広く相談にのり、サポートする試験的な事業が一部の市区町村で今年度行われます。

厚生労働省によりますと、頼ったり、相談したりできる親族がいない、いわゆる身寄りのない高齢者が安心して生活できるようにする仕組みを作るため、今年度、新たなモデル事業を行うということです。

背景には、親族がいない、またはいても離れて1人で暮らしていて、相談できる人もいない高齢者が増える中、高齢者の生活支援やいわゆる「終活」などを総合的にサポートする民間サービスが増えていて、契約金が高額な場合もある上、トラブルも報告されていることがあります。

厚労省は、今年度実施のモデル事業について、1つの自治体につき、人件費などにあてる500万円を補助することにしていて、参加する市区町村を募集中だということです。

モデル事業は、身寄りがない高齢者のうち、経済的に余裕がある人と余裕がない人に向けたものと2つの形式があり、市区町村ごとに、いずれかを選んでも、両方実施してもよいということです。

経済的余裕がある高齢者を対象にしたモデル事業は、市区町村に専用の相談窓口を作り、そこにコーディネーターを置く形です。高齢者は、対面や電話でコーディネーターに、住居や見守りなどの生活の困りごと、財産の管理、死亡後の葬儀やお墓などまで幅広い事柄について相談でき、コーディネーターは、本人の意思を確認しながら、どこに行けば課題が解決するか、行政の窓口や高齢者向けの支援サービスを適切に行っている民間事業者などを紹介し、それらの契約をする際のサポートなども行います。

現状では、民間事業者などが高齢者から契約金を受け取った上で、不適切な対応をしても、確認のしようがありませんが、モデル事業では、適切にサービスが実施されたか、たとえば高齢者の死亡後などに確認することなども目指すということです。

2つ目のモデル事業は、身寄りがない高齢者のうち、十分にお金がなく、そうした民間サービスを利用できない人などを対象にするものです。市区町村から、福祉に詳しい社会福祉協議会などに委託するなどして、民間事業者が行っているような「総合的な支援パッケージ」を作ることを目指します。

内容としては、入院や高齢者施設への入居に必要な手続きを手伝うほか、日常生活の支援(介護保険の手続きや公共料金の支払い、印鑑などの保管)、さらには、亡くなった場合の病院などの費用の精算代行、遺体の確認や引き取り、葬儀、納骨、遺品処分などまで行うことが想定されています。

現状では、高齢者の体の不調などは介護や医療の制度で支えていますが、これまで家族が担ってきた生活面で、身寄りのない高齢者を適切に支える仕組みが必要だと厚労省は考えているということです。

厚労省はモデル事業で課題を明確にし、必要な仕組みを整備すると説明していますが、この仕組みですべてを解決できるわけではないとしていて、ひきこもりなど深い孤立や認知症などで、窓口に相談すること自体が難しい高齢者をどうサポートするかなどは課題です。