真鍋慧“じつは最後まであった”ドラフト上位可能性…本人語る“指名漏れ”その後「順位縛りをしなければ、と思ったことはありません」

1/23(火) 6:01

　昨年のドラフト会議で無念の指名漏れを味わった広陵・真鍋慧（けいた）。話題を集めた“順位縛り”の真相、表情を崩さなかった会議当日の心境、そして進路まで。真鍋本人がNumber Webのインタビューで明かした。〈全2回の第２回〉

　2023年10月26日。広陵の真鍋慧に歓喜の瞬間は訪れなかった。

「自分と同じ左打者が上位指名されたときは…」

　仲間たちは、それぞれ形が違えど、一様に温かかった。高校日本代表の主将を務めた小林隼翔（はやか）は、あえてドラフトに触れず、室内練習場で一緒に汗を流してくれた。小林は、進学する予定である立教大からのプロ入りを目指しており、志を同じくする者だからこその無言のエールだった。

　下級生で唯一、「真鍋さん」ではなく「ボンズさん」と呼んでいた2年生投手の髙尾響は、ドラフトから数日後に寮で顔を合わせたとき、“あえて”指名漏れについて、フランクに声がけをしたそうだ。

「髙尾なりに励まそうとしてやってくれたんだと思います。いじられたので、『黙れや……！』と返しましたけど（笑）」

　仲間たちとの思い出を語ったことで心がほぐれてきたのか、真鍋が苦笑気味に本音をこぼす。

「ドラフト当日、各球団の指名を淡々と見ていた、とさっき言ったんですけど、自分と同じ左打者が上位で指名されたときは『ああ……』と思ってしまいました。正直に言うと」

「上位指名の可能性」は確かにあった…

　上位指名の左打者といえば、昨年ドラフトの“サプライズ”でもあったオリックス1位の横山聖哉、ロッテの外れ外れ外れ1位の上田希由翔ら。ロッテは昨夏の甲子園が終わった後、プロ志望の意思に変わりがないか確認するために、真っ先にグラウンドに駆け付けていた。各方面からオリックスも「真鍋を評価しているようだ」という声が挙がっていた。

　この2球団ではないが、3位で最後の最後まで指名を検討した球団もあった。その球団の中国地区担当スカウトは「ここまで残っているなら指名しない理由がないでしょう！」と猛プッシュしたが、当座の補強ポイント、4位以降の指名順の関係から上層部が首を縦に振らず、あえなく見送ったそうだ。

　悔しい結果に終わったが、評価している球団は間違いなくあった。それでも間をすり抜けるように漏れる可能性があるのが、ドラフトの難しさでもある。真鍋が続ける。

「順位縛りをしなければ、と思ったことはありません。単純に自分の実力がなかっただけですし、やっぱり公式戦、特に甲子園で長打らしい長打を打っていないので。守備位置（高校時代は主に一塁手）のこともあったとは思うんですけど、正直もっとバッティングで結果を残せていたら、順位縛りがあっても指名していただけたはず。バッティングが物足りなかった、実力不足だった。それがすべてだと思います」

卒業後は“中井監督の母校”大阪商業大へ

　卒業後は、広陵・中井哲之監督の母校でもある大阪商業大に進む意向で、2月に推薦入試を控える。後輩たちの練習をサポートしながら、自身のトレーニングにも励む日々の中、夏の大会の映像を見返す機会があった。

「画面の自分を見て“怖さ”がないなと思いました。打ちそうにないというか、雰囲気がないなって。大学では圧倒的な選手になりたい。打席に立つだけで球場の空気が変わる選手になって、大学では日本一になりたいです。高校で達成できなかったチームとしての目標を達成して、日本一と言われる打者になりたい」

　夏の大会が終わって以降もウエイトトレーニングに精を出し、スクワットのMAXは230キロにまで伸びた。打力アップのためにフィジカルを充実させるだけでなく、ノックでは三塁と外野に入り、課題として指摘されることの多かったポジションの幅も広げている。

　中井監督は、大学の後輩にもなる教え子に、こうエールを送る。

「望んだけど叶わなかった。あれだけの辛い思いは彼しか経験していないので、それを晴らしてほしいですね。夢を叶えるか、夢のまま終わらせるかは、これからの彼の努力、心構えにかかっているわけで、今その思いを持っているんだから、やり通してほしい。やり遂げてほしい。そうすれば、必ず長い野球人生が待っていると思うのでね」