春はどこへ…というほど、すでに夏モードな現在。このゴールでウィークも日差しは強く、早急な対策が必要です。最近では、紫外線の悪影響が広く知られ、1年中日焼け止めを塗る人、日傘や帽子、マスクにアームカバーなど、完全防備している人も増加。ただ、夏は屋外で遊びたい人も多く、そもそも「日光って健康に欠かせないのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。日焼け対策のホントのところについて、皮膚科専門医の圓山尚先生(クリニックフォア新橋院院長)に聞きました。

■日焼けには完全防備がマスト? 免疫や骨密度、睡眠に日光浴は必要じゃないの?

――日焼けが肌によくないことは知られていますが、一方で、ビタミンDやセロトニンの生成には日光浴が効果的とも聞きます。いったいどうしたら?

 「ビタミンDは骨代謝に関わり、骨密度を増加させるために欠かせないものです。さらに、コロナ禍には免疫にも関与するということで、重要性が再認識されました。一方、セロトニンは精神の安定や質のよい睡眠に関わる神経物質。どちらも日光を浴びることで生成および分泌されるため、日光浴が必要と言われています。ただ、日焼け対策を徹底することでビタミンD欠乏症になる…という話は聞いたことがないので、あまり気にしなくてもいいと思います」

――完全防備しても健康には問題ないのですね。では日焼け止めは、いつ頃から塗るべきですか?

 「最近では1年中塗ったほうがいいという情報をよく目にすると思います。もちろんそれでもいいですが、12月から3月くらいは紫外線が弱いので、それほど心配しなくてもいいと思います」

――多くの種類が市販されていますが、どう選ぶべきでしょう?

 「かつて日焼け止めの成分には、紫外線を反射させる紫外線錯乱剤と、紫外線を吸収する紫外線吸収剤の2種類がありました。でも吸収剤は、ケミカル成分によってアレルギーなどの肌トラブルを起こす方もいて、最近は使われていません。もう一方の紫外線錯乱剤は反射させるだけなので、肌に負担がかかりにくいメリットがあります。ただし、原料が白い粉なので、たっぷり塗ると白浮きしてしまう場合も。お化粧に影響するようであれば、日中の紫外線の強い時期だけ使って、朝晩や秋冬の紫外線の弱い時期は少しマイルドなタイプの日焼け止めを使用するといいでしょう」

――では、日焼け止めのSPFとPAについては?

 「どちらも紫外線を防御する数値なので、基本的には値が大きいものを選んでおけば間違いありません」

――効果的な日焼け止めの塗り方を教えてください。

 「クリーム状に出るタイプの日やけ止めは、パール粒 1 個分、液状にでるタイプは、1 円硬貨 1個分を手のひらに取ります。額、鼻の上、両頬、アゴに分けて置き、そこからまんべんなくていねいに塗り伸ばす。そのあともう一度同じ量を重ねづけるやり方を推奨します」

――黒い服は紫外線をカットしやすいと聞きました。黒以外の服を着る場合は、服の下にも日焼け止めを塗るべきですか?

 「服を着ることで紫外線が直接肌に当たることは避けられるので、服の下に塗る必要はありません」

■日焼け後トラブルは皮膚科に行く? それとも美容皮膚科?

――では最後に、日焼けしてしまった後のケア方法を教えてください。

 「日焼け止めを塗っても、日光の下にいたら多少は日焼けをしてしまうと思います。気になる場合は、速やかにパックや炎症を沈めるスキンケアを施してください。冷やすことと、その後の保湿が重要です。皮がめくれたりヒリヒリしたり、症状がひどい場合は皮膚科を受診してください」

――そうしたトラブルは皮膚科なんですね。美容皮膚科というのもありますが、そこは治療の仕方が違うのですか?

 「日焼けによる障害は、日光に当たった直後に皮膚が赤くなり(サンバーン)、皮膚の赤みが消失した後に黒くなります(サンタン)。最初の赤くなっている時期に、ヒリヒリして、シャワーを浴びると痺れるような状態でしたら、薬を塗って炎症を抑える必要があります。その場合は皮膚科を受診してください。さらにその後、色素沈着して黒ずんでしまったという場合は、皮膚科でも美容皮膚科でもどちらでもOKです。基本的に、飲み薬で全身のトーンアップを目指します」

【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
クリニックフォア新橋院院長。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。

(文:河上いつ子)