昭和、平成、令和と駆け抜ける最強バディームービー『帰ってきた あぶない刑事』が公開中だ。70代となった舘ひろし、柴田恭兵が再びタカとユージを演じ横浜の街で暴れ回る。過去作では「寄る年並みには勝てないか」と何度も口にしてきた彼らだが、年齢を感じさせないアグレッシブさ、そして色気たっぷりのスマートさをスクリーン狭しと振り撒いている。誕生から40年近い人気シリーズ「あぶない刑事」の魅力を今一度振り返ってみたい。
70代でのカムバック
テレビドラマ放映開始から38年。前作の劇場版から8年。数多くの社会現象を巻き起こし、ドラマ・映画史上において伝説を作った「あぶない刑事」。
映画『帰ってきた あぶない刑事』の製作発表会見では、舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオルが登壇し、主演のふたりは浅野温子と仲村トオルに、「(70代を迎えても)かっこよさは変わらない」と評された。
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このとき、最新作の魅力を柴田恭兵はこう語る。
「昔からのあぶ刑事は楽しくて、かっこよくて、面白くて‥‥でも見終えた後に何も残らない(笑)。そういう映画だったと思いますが、本作はカッコよくて面白くて切なくて‥‥今までにない何か心に残るものがあるんじゃないかなと。必ず元気になれるような、明日から頑張ろうと思えるような映画になったと思います」
ただの人気シリーズの復活ではなく、最新作は新しいあぶ刑事であり、よりあぶ刑事らしい魅力が詰まっている。かっこよくて、ふざけてる。そんな遊び心が今の時代必要だと感じさせてくれる。
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80年代の人気TVシリーズの変遷
1986年10月5日にTV放送がスタートしたドラマ「あぶない刑事」(日本テレビ系列)は、港署の刑事、鷹山敏樹ことタカと大下勇次ことユージが、横浜の街を舞台に駆け巡る刑事ドラマだ。
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舘ひろし演じるタカと柴田恭兵演じるユージのふたりは、髪型をビシッと決めて洒落たスーツを着こなし、サングラスをかけ捜査にあたり、時には全力疾走、時にはハーレーやレパードに乗り拳銃をぶっ放す。
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「あぶない刑事」は、サスペンスとアクションをスタイリッシュかつ、コミカルに描いたエンターテイメント作品で、若者を中心に人気を博し、当初半年間の放送予定だったが、1年に延長された。シリーズ最高視聴率は26.4パーセントを記録し、横浜中華街、元カプリアイランドのコンテナヤードや横浜クルージングクラブY.C.C.や赤レンガ倉庫など、象徴的なロケ地にはファンが押しかけ撮影が中止されることも多々あった。
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あぶ刑事は「特捜刑事マイアミ・バイス」などの警官バディものが元ネタと思われがちだが、実は、アニメ「ダーティペア」が発端。「ダーティペア」の原作者、高千穂遙によると、児童向けアニメとは異なるアウトロー色の濃いダーティペアは続編製作が難しかったため、日本テレビプロデューサーの初川則夫が、ドラマ班に移籍したあと、実写で企画を出したのが「あぶない刑事」だったそうだ。
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そんなあぶ刑事人気はテレビシリーズにとどまらず、劇場版へと広がりをみせる。
テレビシリーズ終了から2カ月後、1987年12月12日、映画『あぶない刑事』が公開され、88年邦画配収ランキング4位を記録。タカとユージのピンチを救いに少年課松村課長が車で颯爽と現れるシーン、捜査課近藤課長がふたりの辞表を手に彼らの行動に目をつぶるシーンは以後定番となる。
おなじみのキャラクターにお約束のセリフ
タカとユージを取り巻く、港署の面々もとても魅力的だ。仲村トオル演じる捜査課所属の町田透は永遠の後輩キャラで常にふたりに振り回される。浅野温子演じる少年課所属の真山薫は、ピンチをよりピンチにする愛すべきクラッシャー。タカとユージの行動に頭を悩ませながらも信頼を置く近藤課長に中条静夫、薫の上司、松村課長に木の実ナナと、誰が欠けてもあぶ刑事は成立しないといっていいほど、各登場人物たちがキャラ立ちしている。
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1988年7月2日『またまたあぶない刑事』の公開を経て、同年10月7日、TVシリーズ「もっとあぶない刑事」が放送開始。
『またまた』では、タカが走行中の貨物列車にダイブしたり、ユージがゴールドのレパードで片輪走行をしたりと、アクションシーンが目白押し。今作で初めて、ダンディー鷹山、セクシー大下と自称するようになる。
このように、あぶ刑事には耳に残るお約束のセリフがある。
近藤課長が「大馬鹿者!」と問題行動が多いタカとユージを叱責するのも定番だ。後に、港署二代目捜査課課長となる、小林稔侍演じる深町、少年課課長の松村もこのセリフを使うようになる。
TVシリーズ「もっと」では「太陽にほえろ」を放送していた金曜8時のゴールデンに移動。平均視聴率20%超えで人気を確固たるものにし、最終回では1989年4月22日公開の『もっともあぶない刑事』への布石が打たれる。
『もっとも』はヒットシリーズの総決算として製作された作品で、本作でTVシリーズ当初からの宿敵であった暴力団組織・銀星会との抗争に終止符が打たれる。この後シリーズは7年間の休止期間に入った。またこの休止期間中に近藤課長役の中条静夫が逝去。あぶ刑事シリーズ最後の出演作品となる。
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1996年9月14日公開の『あぶない刑事リターンズ』では、近藤課長に変わり、小林稔侍演じる深町が捜査課課長に就任。国際テロ組織が原子力発電所のミサイル爆破を企てるが、タカとユージがその計画を阻止する。VFXやCGが活用された作品で、荒唐無稽なストーリーだがあぶ刑事らしいといえばあぶ刑事らしい作品だ。
1998年8月28日にテレビ放送された「あぶない刑事フォーエヴァーTVスペシャル’98」、同年9月12日公開の『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』では、テレビと映画のメディアミックスが行われた。IT時代を反映するストーリー展開で、「TVスペシャル’98」では、竹内結子が一日署長に任命されたアイドル役として登場し、物語の要となる。「THE MOVIE」では、テレビスペシャルで逮捕した犯罪者が逃亡。タンカー爆破を企て、横浜の街を盾に身代金を要求。犯罪組織の傭兵役に加藤雅也、ヒロインに本上まなみ、元傭兵役としてマイク真木が出演。
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バディものではないスリーマンセル
ひとつの事件を追いかけながら、時に単独行動をしながらも、最後には示し合わせたわけでもないのに、一緒になり悪漢に立ち向かうタカとユージの唯一無二のバディ感があぶ刑事の魅力のひとつ。
しかし、忘れてはならないのが、真山薫と町田透の存在だ。
タカとユージは、「打てるものなら打ってみろ」と言われたら、拳銃を打ってしまうあぶない刑事。いつも派手に暴れまわるので、たびたび、拳銃と警察手帳を取り上げられてしまう。そんなときに、ふたりをサポートするのが薫と透だ。
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コスプレでいつも登場する薫には、「一生ついてきます!」とおだてにおだて、透には「女、紹介する」の一言で銃器を調達させたりする。普段は三枚目キャラの薫と透だが、タカとユージだけでは、どうにもできない肝心な場面には、必ず薫と透のどちらかが助けに入る。
彼らの重要性を考えると、あぶない刑事はバディではなく、実は三人組ではないだろうか。そのくらい、あぶない刑事はにとって彼らは重要な存在だ。
そんな透と薫も、初の海外ロケが行われた、2005年10月22日公開の『まだまだあぶない刑事』では、透が捜査課課長に、薫が少年課課長に昇進。くわえて新しい港署の伝説バディを目指すべく、佐藤隆太、窪塚俊介が、薫的ポジションに水川あさみが登場し、港署の世代交代を匂わせた。
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2012年に発売されたDVDマガジン「あぶない刑事 全事件簿」の累計120万部突破を受け、2016年1月30日に『さらばあぶない刑事』が公開される。
タカとユージの定年退職までの5日間を描く本作では、タカの恋人役に菜々緒、ユージが更生させた元不良に吉沢亮が出演。国際的犯罪組織の悪役である吉川晃司のシンバルキックを交えたタカとの戦いは必見だ。
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さらば、から8年 無茶しないと、滅びるぜ。
最新作では『さらば』で無事定年を迎えニュージーランドに移住していたタカとユージが横浜に帰ってくる。ふたりは探偵事務所、T&Y DETECTIVE AGENCY.を立ちあげる。そんな彼らのもとにハーレーに乗った美女・永峰彩夏(土屋太鳳)が、母親・夏子を探してほしいとやってくる。夏子はタカとユージがかつて愛した女性シンガーだった。タカとユージは、彩夏は自分の子供ではないかと?思いながら、3人で夏子を探す。
夏子捜索のなか、チャイニーズマフィアのリウ・フェイロン(岸谷五朗)、謎めいた美女ステラ・リー(吉瀬美智子)、そして、『もっとも あぶない刑事』でタカとユージが射殺した暴力団の銀星会会長、前尾源次郎(柄本明)の息子で、起業家の海堂巧が(早乙女太一)が横浜新カジノ構想を画策し、タカとユージがまたもや事件に巻き込まれていく。
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土屋太鳳が、あぶ刑事を知らない世代へタカとユージの紹介役を務め、早乙女太一が、悪役らしくぶっとんだ狂気で物語のメリハリをつけている。このあぶ刑事チルドレンたちが、本作の魅力を高めている。
本作『帰ってきた あぶない刑事』は、今までのあぶ刑事劇場版で、おそらく一番分かりやすい。それでいて、TVドラマシリーズからつながるタカとユージの魅力、あぶ刑事の世界のいいところをぎゅっと詰め込み見事にパッケージングした成功例だと思う。本作スタッフのあぶ刑事を次の世代へという熱意が伝わってくる。
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前作『さらば あぶない刑事』はタカとユージの定年退職直前の話だが、今回は、課長になった透が定年の年となる。透とはリアルに同い年(1965年生まれ58歳)の杉本哲太が同期の県警本部長役として出演し、タカとユージの行動を注視するように命じる。
キャロルの親衛隊を務めたクールスの元メンバー、舘ひろしの後輩に、横浜銀蠅の弟分、紅麗威甦(グリース)出身の杉本哲太、『ビー・バップ・ハイスクール』デビューの仲村トオル、彼らは横浜と不良つながり。このような配役とメタ表現もあぶ刑事の魅力のひとつだ。
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そんな港署捜査課三代目課長・透の部下たちに、西野七瀬、鈴木康介、小越勇輝。彼らはかつての港署捜査課メンバー、ベンガルが演じた田中文男ことナカさん、山西道広が演じた吉井浩一ことパパのような立ち位置で、一見へっぽこ感のある役柄。ちなみに長谷部香苗演じる瞳ちゃんも現役だ。
そして、ロケ地としてお馴染みのバー「Star Dust」をはじめ、横浜ロイヤルパークホテル、山内埠頭、港の見える丘公園など、魅力ある横浜の街を再びタカとユージが駆け巡る。
個人的にぐっときたのが、「タカ!」「ユージ!」と、ただ名前を呼び合っているだけなのにかっこいい、あのコールアンドレスポンスを多用せず、ピンポイントで呼び合うところがいい。
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もちろん、いくぜ!と挿入歌「RUNNING SHOT」が流れるとユージが走り出し、タカがバイクにまたがり、敵とショットガンで一騎討ちするショータイムもある。エンディングはジャンプして舘ひろしが歌う「翼を拡げて」が流れる。ファンが観たかったものをそのまま観せてくれるのが心憎い。
ここまでつらつらと書いてきたが、こんな予備知識がなくても、最新作は”もっとも”あぶ刑事を楽しめる。70代を迎えたタカとユージは、”まだまだ”ショットガンをぶっ放すし、横浜の街を全力疾走する。”さらば”といっても帰ってくる彼らは、爆発に巻き込まれても死なない”リターンズ”。次作があるかはわからないが、我々のあぶ刑事は”フォーエヴァ―”にかっこいい。
文 / 小倉靖史
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探偵事務所の依頼人・第1号、タカ&ユージどちらかの娘⁉彩夏の依頼は、母親の捜索。タカ&ユージがその行方を探る傍ら、殺人事件が多発する。一体ヨコハマで何が起きているのか?その矢先、爆破テロが仕掛けられ、最大の危機が勃発!果たして彩夏の母親は見つかるのか?ふたりは、愛するヨコハマを守ることができるのか?
監督:原廣利
出演:舘ひろし、浅野温子、仲村トオル、柴田恭兵、土屋太鳳、西野七瀬、早乙女太一、深水元基、ベンガル、長谷部香苗、鈴木康介、小越勇輝、杉本哲太、岸谷五朗、吉瀬美智子
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
公開中
公式サイト abu-deka