『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健・著/ダイヤモンド社)のブームによって、日本人に広く知られるようになったアドラー心理学。アドラー心理学では、感情を「目的があるもの」として扱っています。私たちにとって時に悩みの種ともなる「感情」や「性格」について、アドラーはどのような言葉を残していたのでしょうか。

※本稿は『超訳 アドラーの言葉』(岩井俊憲訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。



強い感情にも意味がある

「情動」とは、行動や感情が過剰に発達したものだ。それは精神という器官に強い圧力が加わったときに突然の爆発のように表れる。だから、行動や感情のように「目的」や「進む方向」がある。

情動とは、謎めいて理解できないような現象ではないのだ。情動は、いつだって「意味」をもつ。その人のライフスタイルや、ガイドラインに沿った形で出現する。周囲の状況や人間関係を、「自分にとって都合のいいものにする」という変化を起こす「目的」をもつものだ。

『性格の心理学』より


悲しみにも目的がある

「悲しみ」という情動は、何かを奪われたり、失われたりしたとき、それらが簡単には癒されるものではないときに感じる大きな感情の爆発だ。その悲しみにも目的がある。

よりよい状況を作り出すために、不快感や無力感を取り除きたいという欲求がその内側にあるものだ。

『性格の心理学』より


怒るのは「他人を支配したい」から

人間の力を追求するがゆえの支配欲を象徴する情動は、「怒り」だ。怒っている人は、いま抱えている問題を「いち早く、力ずくで、打ち負かす」という目的をはっきり示している。

こうした知識をもっていれば、「怒っている人」というのは、「力をふりしぼってひたすらに優位性を示したい人」だということがわかる。認められようとする努力は、しばしば権力を得ようとする陶酔感に変わる。

この種の人は、自分の権力(自分には力があるという感覚)が少しでも脅かされると、怒りを爆発させる。彼・彼女らは、これまでの経験から、怒りを示すことで、最もたやすく他人を支配することができ、自分の意志を押し通すことができると感じている。

『性格の心理学』より


不機嫌とは母親への反抗

カウンセリングで、「この子は、『私は不機嫌でいるのが好きなの』とはっきり言ったのです」と報告してきたカウンセラーがいた。

これは、この子が社会的なつながりをもてないこと、その結果不機嫌であることが、彼女に許された唯一の手段だということを示している。不機嫌であることは、彼女が、彼女の母親を拒むための最良の手段であり、だから不機嫌でいることが好きなのだ。

『アドラーのケース・セミナー』より


感情には「目的」がある

人間は、「目的」を設定して初めて感情が生まれる。
私たちはそのことをきちんと認識しないといけない。

『人間知の心理学』より