PRESIDENT Online 掲載

新年度が始まって1カ月がたった。疲れが出てくる頃だ。環境変化によるストレスへの効果的な対処法はあるのか。産業医の池井佑丞さんは「就職や昇格、結婚といったポジティブな出来事もストレスの原因になる。ストレスへの対処法の選択肢をたくさん持つことがストレスに強い心と体づくりにつながる。いくつか紹介したい」という――。

■仕事や家庭の変化は「ストレスの原因」になる

この春、学校を卒業し新たに就職された方、育休などから復職された方、または生活スタイルの変化から離職や転職をされた方など、環境が変わられた方が多くいらっしゃったと思います。2024年度、大学生(大学院生除く)の就職内定率は2023年12月1日時点で86.0%、短期大学は66.7%(文部科学省「令和5年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(12月1日現在)」2024年1月26日)と、今年も多くの方が社会人としてのスタートを切りました。

また終身雇用の時代からの変化や「働き方改革」によって副業・兼業が認められるようになったことから、離職者数は近年増加傾向にあり、厚生労働省の令和4年雇用動向調査結果の概況によると、令和4年1年間の入職者数は779万8000人、離職者は765万6700人にも上り、新卒生のみならず、多くの方の就労状況に変化があることがわかります。(厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概要」2023年8月22日)

雇用上の変化や家庭の生活の変化、経済状況の変化は、ストレスの原因(ストレッサー)となります。

※「医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います」厚生労働省「こころの耳」より

■ポジティブな出来事もストレスの原因になる

ライフイベントと日本人勤労者の職場生活に関するストレッサーを点数化したデータによると、配偶者の死:83、夫婦の別居(離婚):72というスコアに対し、会社を変わること:64、単身赴任:60、労働条件の大きな変化:55、自身の昇進昇格:40という、結果が得られています。ネガティブな出来事ばかりではなく、結婚や出産、就職といったポジティブな出来事も新たな状況に適応するため、それまでの習慣や生活パターンを変化させる必要に迫られることから、ストレス度は低いものの時にはストレッサーとなることが明らかとなっています。[夏目誠、村田弘、杉本寛治ほか「勤労者におけるストレス評価法」産業医学:30(4)、266-279、1988]

今回は就職、復職、離職によって環境が変わられた皆様に、ストレスとの向き合い方について、ご提案できればと思います。

ストレッサーには自然災害やテロといった外傷性ストレッサーや、現実に遭遇していない出来事であっても、「〜かもしれない」「〜したらどうしよう」と考える心理的ストレッサー、人間関係や生活環境の変化による生活環境ストレッサーがあります。