2024年4月10日、シンガポールメディア・聯合早報は中国の不動産市場について「価格上昇一辺倒の時代は終わった」と題した記事を掲載した。

記事は、中国の地方都市に住む友人が今年初めに半年余りの様子見の末ついに20年余り住んだ家から比較的新しい高層マンションへの住替えを決断し、今の家を売って新居の購入資金に充てようと取引プラットフォームに情報を掲載したところ、エージェントからは再三の値下げ要求が出されたと紹介。現地の1年前の相場なら160万元(約3400万円)で売れたはずが145万元(約3100万円)に下げても売れる気配はなく、底なしで値段が下がっていく状況であることから、今や130万元(約2700万円)で売れれば良しと考えるにまで至ったとした。

一方、新居探しでは友人も大幅な値下げを要求する立場にあり、399万元(約8400万円)だった提示価格を350万元(約7400万円)まで下げるよう強気の姿勢を見せた。相手に大きな損が出るためさすがに厳しいだろうと思っていたところ、売り手から「面談に応じる」という前向きな返事があり、この結果がかえって友人に不動産価格が底なしの下落を続ける中での購入に対する不安感を一層募らせたと伝えた。

その上で、7〜8年前の不動産市場は価格上昇の「天井」が見えず、市場は投資機会を逃すことへの不安が渦巻いていたのは全く異なり、今の中国の不動産市場には「家を買ったら売るときに大損をしかねない」という不安がつきまとっていると指摘。この新たな状況の背景には、不動産業界の不透明な先行きに起因する市場心理の問題だけではなく、 出生率の低下、総人口の減少に伴う住宅需要の減退、過去数十年にわたり急ピッチで進んできた都市化ペースの鈍化、人口1人当たりの住宅面積の大幅増に伴う住宅需要の緩和といった不可逆的な要因も複数存在すると伝えた。

記事は、底が見えない不動産価格下落に消費者の不安が一層募る一方で、現在の不動産市場の再編状態は「不動産価格は上昇を続け絶対に下がらない」という人びとの神話を破壊し、投機的ではなくより冷静に不動産市場の需要と供給の現実を見るという、長期的に見れば良い傾向も生んでいると紹介。この前向きな調整過程を経るためには中国社会が「肉を切る」ような代償を支払わなければならないのだとした。

そして、いかにして不動産市場をソフトランディングさせるか、痛みが伴う調整の中でいかにして市民への影響を軽減させるかが、役人が直面しなければならない課題になっていると結んだ。(翻訳・編集/川尻)