Steve Holland

[ワシントン 9日 ロイター] - パレスチナ自治区ガザでの軍事行動で強硬姿勢を崩さないイスラエルに対し、バイデン米政権が一部武器支援の停止を決定した。米当局者によると、対イスラエル政策の転換点となったのが、4月4日のバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談だった。

イスラエルの激しい攻勢でガザの人道状況が極めて深刻になり、米国のイスラエル支援は国際社会から厳しい目が向けられた。ガザ最南部ラファへの侵攻が現実味を帯びる中、バイデン大統領はネタニヤフ氏に侵攻を思いとどまるよう何度も説得を繰り返していた。時には緊迫したやり取りもあったが、バイデン氏が支援停止を振りかざすことはなかった。

しかし、ガザで食料支援を行っているワールド・セントラル・キッチンの車両をイスラエルが攻撃し、メンバー7人が死亡したことで潮目が変わった。この直後に行われた4月4日の電話会談でバイデン氏は「市民や人道支援従事者を守れ。でなければ米国の政策は変わる」と最後通牒を突き付けた。

今回の措置は、レーガン政権下の1982年にレバノン侵攻を巡りイスラエルへのクラスター爆弾輸出を禁止した時ほど厳しいものではない。しかし両国関係の転換点となることは間違いない。米当局者によると、政権は支援停止を表沙汰にしないつもりだったが、イスラエル側が明らかにしたため公表した。

<強みの交渉力が通用せず>

バイデン氏は、たびたび意見が対立するネタニヤフ氏も含め、さまざまな外国指導者と交渉できる能力を強みとしてきた。しかし、ラファ侵攻停止の説得にネタニヤフ氏が公然と抵抗したことで、外交政策の専門家としてのバイデンのイメージは大きく低下した。

今週6日もバイデン氏は、ネタニヤフ氏にラファを攻撃しないよう改めて促した。しかしその後、ネタニヤフ氏はハマスが受け入れた停戦協定を拒否し、ラファで空爆を実施した。

ラファ侵攻懸念が高まるにつれ、米政権内ではイスラエル軍のそれまでのガザ作戦の合法性に疑問を呈する声が上がった。ブリンケン国務長官は、米国が供与した武器を国際人道法に従って使用しているというイスラエルの説明が「信用できない」と複数の高官から進言を受けた。

オースティン国防長官は、イスラエルのガラント国防相と毎週、非公式な電話会談を行い、民間人の保護を訴えている。しかし、5日のこの定例電話会談の翌日、イスラエル国防省は、ラファを含めガザでの軍事行動が必要との見解を示した。