4人の専門家が江藤新平について語ったシンポジウム=佐賀市の県立美術館ホール

 明治政府の初代司法卿を務めた江藤新平(1834〜74年)の没後150年を記念したシンポジウムが29日、佐賀市の県立美術館ホールで開かれた。「佐賀の七賢人」と称され、明治の新しい国づくりに貢献した江藤の活躍の背景を、4人の専門家が解説した。

 藩政史研究家の大園隆二郎さんと武雄市歴史資料館アドバイザーの川副義敦さん、大倉精神文化研究所研究部長の星原大輔さん、佐賀城本丸歴史館学芸担当係長の藤井祐介さんが登壇した。

 大園さんは、佐賀藩と10代藩主・鍋島直正の存在があったからこそ、江藤は近代的な裁判制度導入など多くの功績を残すことができたと指摘。「明治6年には、江藤をはじめ佐賀出身者が参議の多くを占めた。直正公や佐賀藩の影響力が大きかった」と述べた。

 江藤の生い立ちに触れた川副さんは「江藤や大木喬任、大隈重信は、母の大きな愛情が共通点として背景にある」と分析した。星原さんは「脱藩の罪で永蟄居(えいちっきょ)(長期謹慎)を命じられた中での情報収集力が、藩内で評価された」と卓越した行動力を示すエピソードを示した。

 藤井さんは佐賀城本丸歴史館で開催中の江藤の特別展を紹介しながら、「佐賀の乱(佐賀戦争)を政府側からではなく佐賀藩や江藤の視点で捉え直すことで、江藤自身の見方や評価も変わる」と語った。

 シンポジウムは特別展に合わせて開き、約480人が聴講した。(坂本有佐)