弱っていた花々が、家の周りで輝きだした

 田んぼを取り囲むオオデマリとフジに癒やされながらの田植えが始まった。

 先日、友人から紹介された方に、庭木をもらい受けに行った。少し前にご主人を亡くされ、彼が育てていた庭木を譲りたいということだった。

 案内されると、植木鉢の花木はほとんどが枯れようとしていて、雑草に埋もれていた。東京のご家族のところへしばしば行くので、庭木の世話はできないという。

 ご主人は妻に苦労をかけたくないと、亡くなる前に遺産や葬式の手配まで済ませて他界されたと紹介者から聞いた。

 僕らは、切なくいたたまれない気持ちを胸に、軽トラックに載せ、山に帰った。水をたっぷりとかけてやり、移植を始めた。気付くと夕暮れになっていた。花木が心なしか元気に見えた。生き物の世話からは何かをもらう。僕らも心を取り戻せた。

 すると不思議なことだが、彼女への感謝の気持ちがふつふつと湧いてきた。無心で花木をよみがえらせようとさせてもらったことの、なんとありがたいことかと。世界は変わった。

 午前中の出来事は、その後の態度によって、まったく別のものに変わった。今ここでの態度が、過去の意味さえも変える。(農家カフェ店主 小野寺睦)