NHKの朝ドラ「虎に翼」で、男装を貫く女子学生が司法試験の際、面接官にその服装をやゆされ、抗議する場面があった。「あなたの偏見を押しつけるな」と。結果は不合格。状況は違っても、面接で嫌な質問を受けたことがある人はいるかもしれない◆先日の小欄で、就職活動中の女性が最終面接で祖父母の名前を聞かれたという話に触れた。命のつながりに感謝しようとの趣旨だったが、「本人の能力とは関係ない個人的な質問は差別につながる」という指摘を読者から受けた。誰にだって一つくらい、触れられたくない弱みや秘密はあると思う。小欄で苦い記憶を思い出した人がいたかもしれない。ごめんなさい◆そもそも、人を評価し、判断することは難しい。古い付き合いでも長く誤解していたり、意外な一面を新たに発見したりすることがある。ましてや短時間の会話では判断できない◆就職は人生を大きく左右する。だから、面接では性差別や人種差別、職業差別は論外。最重視するのは個人の適性や資質のはずだ。それでも、単純な思い込み、「無意識の偏見」が心のどこかに潜んでいないだろうか。自戒を込めてそう思う時がある◆他人を全て理解することは難しくても、理解し続けようとする努力が必要だ。面接だけでなく、普段の人間関係にも望まれる姿勢の一つである。(義)