埼玉県川口市は2月、JR川口駅にこれまでの京浜東北線に加え、新たに上野東京ラインを停車させるため、JRと協議を進めると発表した。JR側から停車に必要な施設整備案が示された。市は案を精査し、JRと基本協定締結を目指すとしており、実際に同線が川口駅に停車するのは2037年以降となる見込みだ。

 奥ノ木信夫川口市長は2月8日の臨時会見で計画案を発表し、「都市間競争に勝てる、選ばれるまちづくりが必要」と計画推進がまちの発展に不可欠であると力を込めた。

 JRからは1月末、停車に必要な三つの整備案が示され、そのうち、現在の川口駅西口側にホームを新たに造り、駅舎の既存デッキを北側に屋根付きで拡幅する計画案の概算事業費は420億円。市は現在、市の負担額を精査しており、市民の声を聞くパブリックコメントを経て、JRとの基本協定締結へ市議会の承認を得たいとしている。

 地元経済界からは歓迎の声が聞かれる。翌9日には奥ノ木市長自らが川口商工会議所の議員協議会に出席し「中距離電車の川口駅停車について」と題して講演。市財政の健全性や再開発への補助がその後の税収増につながると強調し、市都市計画部長が駅整備基本計画について説明した。

 説明を受けた細野博隆会頭は「夢がようやく実現する。(羽田空港アクセス線整備により)羽田空港まで直接行けるようになるのも大きい。人口増に見合ったまちづくりを推進してほしい」と話す。田中宣充副会頭は地元商店街を意識し「商業地として選ばれるには交通手段の要素は大きく、都市間のレースに乗るに中距離電車停車は不可欠。最後のビジネスチャンスを確実にものにしてほしい」と力を込めた。

 一方で総務省の発表で日本の総人口が13年連続で減少し、埼玉も減少傾向となるなど、まちの成長継続を危惧する声もある。市は「国立社会保障・人口問題研究所」の推計から、市人口のピークが30年(59万6282人=18年推計)から、35年(60万6590人=23年推計)へと、ここ5年で後ろ倒しとなったデータを示し、こうした数字を「これまで都市間競争に勝ってきている証拠(奥ノ木市長)」とみる。市は22年3月策定の「川口駅周辺まちづくりビジョン」で「さらなる選ばれるまちとして発展する」ことを掲げており、都心への近さを最大限生かしつつ、駅や周辺の整備を通して、こうした流れをさらに加速させたい考えだ。

 駅改修で想定される工期はJR側との基本協定締結後、測量・設計に2〜4年程度を要し、その後、上野東京ラインのホーム供用開始までに10〜12年程度を見込む。市は早ければ今年の12月市議会にJRとの基本協定関連の議案を提案したいとしており、25年に基本協定が結ばれた場合、上野東京ラインが川口駅に停車するのは最速で37年。駅を核に、向こう10年以上先を見据えた川口のまちづくりが動き出している。