30日出そろった証券大手5社の令和6年3月期連結決算では、今年2月に日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新し、3月には4万円の大台を突破するなど株式市場の盛況を反映し、複数の社で利益が大幅に増えた。1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)も追い風で、「貯蓄から投資へ」の流れを後押しできるかが注目される。

「お客さまの含み益は過去最大となっている」。30日の決算発表記者会見でSMBC日興証券の後藤歩常務執行役員はこう強調した。5年3月期は相場操縦事件で最終損益が398億円の赤字に転落していたが、6年3月期の最終損益は162億円の黒字へ転換した。

6年3月期の最終利益が前期比90・3%増の1215億円に膨らんだ大和証券グループ本社の吉田光太郎常務執行役最高財務責任者(CFO)も4月25日の記者会見で「好調なマーケットの追い風を受けた」と話す。各社とも株式市場での活発な取引で、個人部門の好調さが利益を押し上げた形だ。

新NISAも追い風だ。後藤氏によると、SMBC日興証券の今年1〜3月の新NISAの口座開設数は前年同期比で3倍弱に拡大。「投資家の裾野が広がっていく」と新たな顧客の取り込みに強い意欲を見せる。

政府は、家計の金融資産を成長投資に振り向ける資産運用立国を掲げ、今夏をめどに特区の創設などを決定する構えだ。長年にわたってかけ声倒れになっていた「貯蓄から投資へ」の流れを今度こそ本格的に根付かせるため、証券各社が顧客本位を徹底し、使い勝手が良い投資環境を整備できるかが問われている。

(永田岳彦)