岸田文雄政権下で初となる党首討論が19日、行われる。過去には時の首相が唐突に衆院解散を表明する場面もあった。自民党は派閥のパーティー収入不記載事件を受けて次期衆院選で苦戦が予想されるだけに、首相の発信を注視する自民議員は少なくない。憲法改正などを念頭に置いた通常国会の会期延長や、人心一新のための内閣改造などに言及するのかも関心の的となっている。

「首相は党首討論で『解散する』なんて、言わないよね」。自民中堅は不安げに話す。念頭にあるのは平成24年11月の党首討論だ。

当時、民主党を率いていた野田佳彦首相が自民の安倍晋三総裁との論戦で、衆院定数削減と引き換えに「解散をします。やりましょう」と断言したことは記憶に新しい。内閣支持率が低迷していた中での奇襲ともとれる野田氏の電撃表明だったが、同年12月の衆院選で民主は大敗し、自民の政権奪還を許した。

自民関係者は当時と現状が酷似していると指摘し、「今、選挙をしたら自民、公明両党合わせても衆院で過半数を割る。『破れかぶれ解散』にほかならない」と懸念を示す。

党首討論は他の委員会とは異なり、首相が立憲民主党や日本維新の会などの野党党首の質問に答えるだけではなく、反論もできる。だが、全体の時間がわずか45分で議論が深まらないため、野党側は今月14日に開かれた衆参両院の国家基本政策委員会の合同幹事会で討論時間を増やすよう与党側に要求。衆参両院の委員長が対応を検討中だ。

党首討論は菅義偉政権下の令和3年6月を最後に開かれていなかった。党内には首相の発信は好印象を残さないという声もあり、自民重鎮は不記載事件が招いた不信感は党首討論では払拭できないとして「期待することは何もない」と語る。

衆院側の与党幹事を務める自民の御法川信英国対委員長代理は記者団に「良い議論になるように頑張ってもらいたい」と述べた。(今仲信博)