【ファサーノ(イタリア南部)=坂本一之】イタリア南部プーリア州の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で14日の議題となった「インド太平洋」地域の課題を巡り、バイデン米政権は南シナ海での米軍と中国軍の衝突に懸念を強めている。中国は南シナ海で米軍機への異常接近やフィリピン船への妨害行為などの危険行為を繰り返し、緊張を高めているからだ。

「中国は兵器を製造する能力や技術を(ロシアに)供与している。つまり、中国はロシアを支援しているのだ」

バイデン米大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領と臨んだ記者会見でこう述べた。

ゼレンスキー氏が、自身に中国指導者が「ロシアにいかなる兵器も売らない」と語ったことを紹介した際、バイデン氏が口を挟んだ。その口調は、中国の言葉をうのみにしてはいけないと警鐘を鳴らすかのようだ。

バイデン氏がオバマ政権で副大統領を務めていた2015年、中国の習近平国家主席は南シナ海で建設を進める人工島に関し「軍事化の意図はない」と発言した。しかし、実際は人工島を軍事拠点化。いまや南シナ海で活動する米軍への威圧を強め、偶発的な衝突を招きかねない状態だ。

米国防総省は23年10月、東・南シナ海などの国際空域で中国軍による米軍機への危険行為が2年間で180件超に達したと発表し、中国を牽制(けんせい)した。しかし中国は危険行為を止めず、同月に南シナ海上空で中国軍戦闘機が米軍の戦略爆撃機に異常接近。視界が限られる夜間に10フィート(約3メートル)以内に接近するなど「衝突の危険」にさらした。

米国防総省関係者は「年々、危険行為はエスカレートし、非常に危ない」と危機感を強める。

また、中国は南シナ海で領有権を争うフィリピンへの威圧も強化。スプラトリー(中国名・南沙)諸島のセカンド・トーマス礁周辺でフィリピン船に妨害行為を繰り返し、今年3月には比側に負傷者が出た。フィリピンの同盟国である米国は比側に死者が出た場合、相互防衛条約に基づき反撃の判断を迫られる。