いわゆる「袴田事件」の再審=やり直し裁判で5月22日、検察は袴田巖さんに再び死刑を求めました。弁護団は検察を痛烈に批判した一方、元検事は今回の判断は「当然」として理解を示しました。

<浜松総局・野田栞里記者>
「午後10時、袴田きょうだいがそろって帰ってきました。袴田さんはいつもと変わらない様子です」

巖さんは、自分の代わりに出廷した姉のひで子さんを駅に迎えに行ったそうです。

1966年、旧清水市で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巖さんをめぐっては、高裁が捜査機関による証拠のねつ造に言及し、再審が決定。静岡地裁で審理が続いていましたが、22日、最後の公判で検察は袴田さんに死刑を求刑しました。

それでも、無罪を確信したと話す弁護団は、再び極刑を求刑した検察を痛烈に批判しました。

<袴田事件弁護団 角替清美弁護士>
「検察官は汚点を残したと思いますし、これが歴史に汚点を残したという風にならなければ検察官は同じことをまた繰り返します」

袴田さんは、半世紀近くにわたる獄中生活で精神がむしばまれています。

<姉・ひで子さん>
「巖は妄想の世界に生きているのでわかるかどうかわかりませんが、(判決の内容は)説明したいと思っております」

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「僕は弁論でも言ったんですけど、ほかの人には関心もない、世の中のことには関心が無い。回復しがたいダメージを与えてしまう」

元裁判官の木谷明さんは今回の死刑求刑を疑問視します。

<元東京高裁裁判官 木谷明弁護士>
「彼は現在、心神喪失状態で出廷も免除されているわけですね。そういう人に対しては死刑は執行できないわけです。そもそも執行できない刑を求刑するということが果たしていいのかどうかという問題もあります」

刑事訴訟法では「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する」とされています。

一方、元検事の大澤孝征弁護士は検察の姿勢に理解を示します。

<元検事 大澤孝征弁護士>
「検察官が証拠と法によってあくまでも、この事実を被告人が行ったんだという認定にいたれば、有罪を確信して論告した以上は、これに伴う死刑求刑を行うのは当然のことではないかと思います」

9月26日の判決で問われるのは、命の重みと再審制度のあり方です。