円安の影響を受けて若者たちの間で今「稼げる」と話題のワーキングホリデー。しかし実際はそうそううまくはいかないという話も…今回はオーストラリアへ“ワーホリ”に行ったという女性が厳しい実情を語ってくれた。

日本より稼げる海外に夢はあるのか?

円安や海外への渡航制限がなくなった影響で今若者たちの間で再燃しているワーキングホリデー。ワーホリ提携国の中には日本の何倍もの時給の求人が多くあることから、「日本にいるより海外で稼ぐほうが賢い」と考える若者が増えている。

しかし海外出稼ぎはいい面ばかりでもない。最近では風俗や売春といった目的で、日本人が違法に海外出稼ぎするケースが問題となっている。

はたしてワーホリには皆が夢見るような話が満載なのだろうか。

現在オーストラリアにてワーホリ中で、今年の6月に帰国予定だというユイさん(仮名・26歳)がワーホリの“衝撃の”実情について語ってくれた。

“ワーホリバブル”で人材は余剰気味…職が見つからないまま帰る人も

ユイさんは2024年1月にオーストラリアへ出発し、最初はクイーンズランド州の大都市・ブリスベンに滞在した。計画では語学学校に通いながらアルバイトをする予定だったという。語学学校の費用をはじめ、現地での生活費、ビザ費用など諸々の費用を含め約300万円をワーホリのために貯金していたそうだ。

「最初の3か月は語学学校に通いつつ、学校の寮で生活していました。寮費は事前に3か月分を支払っていたので、当分は家賃の心配をすることもなく、学校に通っている間にアルバイトを見つけようと思っていました」(ユイさん、以下同)

しかし同じくワーホリで来ていた周囲の日本人たちは金銭面で苦労していたという。

「周りの人たちはだいたい1か月で寮から出て行きました。オーストラリアでは新しい物件に住む際に『ボンド』という保証金を支払います。このボンドはだいたい家賃の2週間から1か月分くらいで、寮を出た私の友人の話では、ボンドの費用が高くて、その後の家賃を支払い続けるのに苦労したと聞きました。

さらにその状態で職が見つからないとなると、貯金がすぐに底を尽きてしまい、すぐに日本に帰国するという人もちらほらいましたね。出発前に貯金をしておくのがどれほど大切か痛感しました」

では肝心の仕事についてはどうなのだろうか。

「職を見つけるまでに何十件も求人に応募しなければいけませんでした。私は30件ほどでしたが、周りの友人たちは50件ほど応募して、返事が来るのはわずか1/3程度。なかには1か月半後に返事が来たところも。またネットからの応募だと返事が来ないことが多いので、書類をもって直接お店をまわるなんてこともザラでした。

職を見つけるのにこれだけ苦労するのはおそらく、現在のワーホリブームで人材が有り余っているからだと思います。時給が高いオーストラリアには日本人だけでなく、世界各国から同じように出稼ぎに来ている人がたくさんいました。現地の人ですらアルバイト探しに苦戦している状況なので、ワーホリで滞在期間が限られている私たちのような人材を採用してくれるところは貴重なんです」

日本では不採用の場合でも連絡が来たり、「何日以内に返事がなければ不採用」というようなルールがあったりすることが多いが、オーストラリアではひたすら応募し続けるほかなく、面接までこぎつけることはなかなか難しいというのが実情のようだ。人手不足に陥る日本とは反対に、オーストラリアは現在人材余剰の状態なのだ。

試用期間中は給料なし、その後即解雇のケースも…

そんななかユイさんが友人の紹介で就職にこぎつけたのが、懐石料理などを提供する高級日本食レストランでのアルバイトだった。しかし長続きせず、3〜4回出勤して辞めてしまったという。

「辞めた理由は日本人のオーナーとそりが合わなかったからです。そのオーナーは年配の女性の方だったのですが、いわゆるお局気質で、嫌味をよく言われました。そして給料面での不満もきっかけでした。懐石料理の説明などで高度な英語力が必要にもかかわらず、時給は平均以下の21ドル(約2088円。※オーストラリアの平均時給は約2300円)だったので、労力に見合わないと思い、辞めました」

ユイさんによるとアジア人オーナーの店はトラブルが多いという。

「私の友人は日本式パンケーキ店で働いていたそうですが、試用期間の給料が出なかったという話や、試用期間が終わると即解雇されたという話を聞きました。そのパンケーキ店も日本人のオーナーだったそうで、一概には言えませんが、アジア人オーナーは親切な人ばかりではないという印象を受けましたね。それに比べて現地のオーストラリア人がオーナーの店で働いた友人は人にも恵まれ、トラブルもなく平和にアルバイトをしていました」

同じ日本人でも親切な人ばかりではないというのは何とも複雑だ。ユイさんはその後、中国人オーナーのカフェでのアルバイトも経験したが、1か月ほどでクビになってしまったそう。

「カフェでは案内や、オーダーを聞くこと、配膳、皿洗いなどを任されました。そのカフェは席数も多く、繁盛店だったのでとても大変でしたね。そこは週2ほど出勤していたのですが、1か月ほどで来なくていいと言われ、突然職を失いました。カフェはワーホリの中でも人気の求人なので、バリスタの資格やラテアートの経験がないとなかなか正式に雇ってくれないのだと思います」

昼の仕事だけでは給料が足りない子は現地のアジア人キャバクラに

ユイさんはその後アルバイトを探すことは諦め、観光に徹したそうだ。

「思ったように稼げないし、仕事もすぐには見つからず、貯めたお金は減っていく一方でした。このまま帰るのはもったいないと思い、せっかくオーストラリアに来たのだから楽しもうと、今は様々な州を観光しています」

ユイさんのように貯金に余裕があれば途中で観光を楽しむ余裕もあるだろう。しかし金銭的に厳しい状態で生活するワーホリ女性たちのなかにはキャバクラなどの“夜の仕事”を始めるケースも少なくないという。

「私の周りの知り合いは夜職を始めた子が多かったです。なかなか希望の職に就けない子や、昼の仕事だけでは給料が足りない子は、現地のアジア人キャバクラで働いていました。キャバクラは飲食店などと違って、比較的面接にも受かりやすく、時給も5000円から6000円と高いのでお金に困った子はそこに目を付けがちでした。

しかし実際働いた子に話を聞くと、指名されなければ帰らせられるだけで1円たりとも給料はもらえないらしく、非常に厳しい世界だと感じました」

日本の一般的なキャバクラの場合、待機時間も時給が発生することが多いが、オーストラリアのキャバクラは基本的に客に指名され、卓についた瞬間からしか給料は発生しないとされている。

「そして一番“闇”を感じたのが、客に“お持ち帰り”されることがよくあるという話です。オーストラリアのキャバクラでメインとなっている客層は富裕層の中国人だそうで、よく『ホームパーティーしよう』と誘われて、客とキャバ嬢が複数人でアフター(店外で客とキャバ嬢が過ごすこと)に行くらしいです。
そこでは性行為を強要されることも多いみたいで、私の知人はなんと避妊せずにやられてしまったといいます。その知人はすぐに薬局でアフターピルを購入して飲んだと言っていましたが、キャバクラではそういうことは日常茶飯事のようです」

最近では日本人の売春行為が世界的に問題になっているが、ユイさんの知人のケースのように最初はそんなつもりじゃなかったのに、お金に困った結果、いつの間にか売春に陥ってしまったというのはワーホリの闇深い一面ともいえる。

最後にユイさんはワーホリの経験についてこうまとめてくれた。

「ワーホリに行ってよかったこともあります。海外の知り合いが増えたし、さまざまな人と出会って、様々な国の価値観に触れることで視野も広くなりました。1人で海外生活することで自信に繋がることもたくさんあります。

しかし働くことに関しては甘くはなかったです。実際に体験してみて、巷で言われているワーホリ成功談は本当に運に恵まれたごく一部の人たちの話だと痛感しました。ワーホリに行くなら、本気で長期滞在したいと考えている人、あるいは海外でも通用するようなスキルを持った人でないと夢のワーホリライフは厳しいのではないかと思います」

取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio