腑に落ちないのは、ヘタフェ戦で先発しなかったことではなく、そのことにもう誰も驚かなくなっていることだ。まるでそれが当たり前で、予想されていた事態であるかのように。

 我々は今シーズン、攻撃面で最も違いを作り出してきた選手の話をしている。何なら、昨シーズンもそうだった。ベンチから戦況を見つめるタケ・クボ(久保建英)の表情がすべてを物語っていた。

 ましてや相手は古巣のヘタフェだ。より高く、より野心的な目標を掲げるクラブで、成長した姿を見せたいという気持ちは強かったはずだ。

 これでラ・リーガ直近の6試合で、ベンチスタートは4度目だ。残りの先発で出場した2試合についても、アラベス戦は44分に負傷で交代し、カディス戦は66分にピッチを退いている。
 
 前回のレポート記事でも指摘したように、タケに何かが起きている。にもかかわらず、クラブは透明性を持って説明することはない。ただベンチスタートが続き、チームは取りこぼしを続けている。
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 ヘタフェの本拠地、コリセウムはソシエダにとって鬼門のスタジアムだ。2006−07シーズンにおいて40年ぶりに2部降格が確定した地でもあり、もう何年も、良いパフォーマンスを見せたためしがない。

 リオネル・メッシがエースに君臨するバルセロナの本拠地、カンプ・ノウに乗り込む際に、「歯医者に行くようなものだ」と苦虫をかみつぶしていたホアキン・カパロスと同じ感覚にチームもファンも陥っている。

 もちろんヘタフェはバルサとは似ても似つかないチームだが、この日もまた反則すれすれのところで生きることを許すレフェリーも味方につけて、ソシエダを苦しめた。その犠牲の1人になったのが、前節のアルメリア戦でMVP級の働きを見せたシェラルド・ベッカーだ。

 バレネチェアの得点をアシストしたピンポイントクロスは見事だったが、期待されたサイドの突破口としての役割を果たすことができず、タケが普段見せるパフォーマンスとは程遠い内容だった。

 タケの登場が待たれる中、イマノル・アルグアシル監督は、前半負傷したバレネチェに代わって、後半頭から右サイドに投入。しかし60分に、深くまでえぐって折り返したクロスをダビド・ソリアとジェネに弾かれたシーンが目を見張った程度で、なかなかボールに絡めない時間帯が続いた。
 
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 アルグアシル監督はたまらず再びカードを切り、アリツ・エルストンドの投入を境に、フォーメーションを5−3−2に変更。タケはより自由度の高いトップ下にポジションを移した。

 しかしその後も攻めあぐねる展開が続き、78分に左サイドで鋭いドリブル突破から演出した好機も、いつものようにサディクによって無駄にされた。
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 結局、試合後、オドリオソラが「ピッチが硬かった影響で、ボールはよく跳ね、しかも日差しが強く暑かった。プレーすることは簡単ではなかった」と語ったように厳しいコンディションも重なり、ソシエダは最後まで勝ち越しゴールを奪えないまま1−1で引き分けに終わった。

 幸い、来シーズンまでコリセウムに戻ることはない。今週金曜日、ソシエダはタケにとってこれまた古巣のレアル・マドリーをアノエタに迎える。アルグアシル監督がお気に入りのスタメン「タケとその他の10人」を復活させるにはまたとない機会だ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸