大岩剛監督が率いるU-23日本代表は、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップの準決勝でイラクに2−0で勝利し、上位3か国に与えられるパリへの切符を掴み取った。

 残すはウズベキスタンとの決勝のみ。優勝した場合は本大会でグループDに入り、パラグアイ、マリ、イスラエルと同組になる。準優勝なら、スペイン、エジプト、ドミニカ共和国が待つグループCに組み込まれ、初戦は優勝候補の一角であるスペインと戦う。

 チームとしては8大会連続の五輪出場を決めたが、選手たちの争いはここからが本番だ。U-23アジア杯は23名の選手を登録できたが、パリ五輪本大会は18人+バックアップメンバーの4人(怪我人が出た場合に初戦が始まるまでに選手の入れ替えができる枠)で戦わなければいけない。

 狭き門であるのは間違いなく、さらに24歳以上の選手が出場できるオーバーエイジ枠が設けられている。日本は3枠を最大限に使う構想を持っており、そうなるとパリ世代の選手は15名しか登録できない。

 こうした条件と、所属クラブとの交渉がスムーズにいくことを前提に考えた場合の最強布陣を考察していくと、チームがガラリと変わっても不思議ではない。

 タレントがひしめくGKは甲乙つけ難いが、鈴木艶彩(シント=トロイデン)と小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)のふたりが有力だ。鈴木は1月のアジアカップでA代表のゴールマウスを預かっており、パリ世代で最も実績があるのは言うまでもない。
 
 昨年9月のU-23アジア杯予選以降は大岩ジャパンの活動に参加していないが、最もレギュラーに近い存在だろう。今回のU-23アジア杯で守護神として活躍した小久保も能力が高く、ベンチに置いておくにはもったいない。スキルが高く、ビルドアップも正確。また、ムードーメーカーとしても欠かせない人材で、チームに一体感をもたらすうえで重要な役割を担う。

 CBはオーバーエイジを2枠使うべきだと考える。チーム発足後から西尾隆矢(C大阪)、鈴木海音(磐田)、木村誠二(鳥栖)の3人がポジションを争ってきたが、絶対的な柱にはなり切れなかった。

 そうした状況を考えると、オーバーエイジの1人目はA代表でリーダーシップを発揮している板倉滉(ボルシアMG)を選出したい。高さと強さを兼ね備え、ビルドアップも得意としており、絶対的な守備の軸としてチームを支えてくれるだろう。有事の際にはボランチにも対応可能。18人での戦いを想定した場合、複数ポジションができるのは大きい。

 2人目は町田浩樹(ユニオンSG)と考える。CBが本職で左利きという点も魅力。左SBでもプレーできるため、板倉同様に2つのポジションをハイレベルにこなせるのは心強い。

 パリ世代では高井幸大(川崎)を推したい。昨季までは安定感に欠け、集中力を切らすプレーも目についた。しかし、今大会では身体を張った守備とコーチングで最終ラインを統率。自らチームを引っ張っていく気概も見えた。そうした成長を踏まえ、高井に3人目のCBを託す価値はあるだろう。

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 SBも人材は多いが、右は今大会で一気に株を上げた関根大輝(柏)に期待したい。187センチのサイズに恵まれ、高い戦術眼でインナーラップを用いながら攻撃でも貢献できる。アクシデントがあればCBもこなせるだけに、重宝されるのではないか。

 左は、アジアの戦いで攻撃力を示した大畑歩夢(浦和)も実力的に申し分ないが、A代表歴を持つバングーナガンデ佳史扶(FC東京)か。フィジカルが強く、推進力も武器の一つだ。

 もう1人は内野貴史(デュッセルドルフ)を選びたい。両サイドバックに対応可能で、クローザーとして1つ前のポジションもできる。そして、何よりピッチ外でも汗をかけるタイプで、腐らずにやり続けられるメンタリティは、チームにポジティブな空気をもたらす。そうした献身性を考えれば、必要な人材ではないだろうか。

 ウイングは、U-23アジア杯組の平河悠(町田)、佐藤恵允(ブレーメン)、山田楓喜(東京V)も捨て難いが、対世界を見据えた時には、海外組の力に懸けたい。

 左サイドは、斉藤光毅(スパルタ)が一番手と見る。オランダリーグ1部で個の高い力に磨きをかけており、大柄なDFを相手にしても単騎で突破できる力を持つ。
 
 右サイドは、満を持して久保建英(ソシエダ)を招集したい。言うまでもなくチームの顔になるべきタレントであり、A代表の実績を考えても不動のエースになり得る。大岩ジャパンでは一度もプレーしていないが、知っている顔も多く、連係面に不安はない。絶対軸になるべき存在だ。

 サイドでは三戸舜介(スパルタ)も推したい。大岩ジャパンで評価を徐々に高め、U-23アジア杯予選では目覚ましいプレーを披露。オランダリーグでも実績を積んでおり、機動力を活かした仕掛けと両サイドハーフに対応できる汎用性はチームの力になる。

 最前線は、長らくこのチームの顔として活躍してきた細谷真大(柏)が軸。今季は苦しんでいたが、U-23アジア杯では準々決勝で初ゴールを奪い、準決勝でも先制点を決めた。最もプレッシャーが懸かる局面で見せた勝負強さも含め、パリの地でもエースストライカーとして活躍が期待される。

 2番手は藤尾翔太(町田)。センターフォワードを主戦場とし、右のウイングでもプレーできる。身体を張って泥臭く戦えるタイプで、肉弾戦も得意。守備も献身的でハードワークを厭わないスタイルで、大岩監督からの信頼も厚い。

 さらに福田師王(ボルシアMG)も入れたい。高卒で単身渡独し、1年足らずでトップチームまで辿り着いた。その能力はピカイチで、ゴールを奪うスキルはこの年代でも屈指のレベルにある。昨年11月の活動でしか大岩ジャパンに参加していないが、決定力の高さを武器にジョーカー役を任せたい。
 
 最後に、最も選考が難航しそうな中盤を考察したい。今大会でキャプテンを務めた藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)はアンカーのポジションで重責を担っており、外せないだろう。U-23アジア杯に未招集の鈴木唯人(ブレンビー)は、クラブでは直近6試合で6ゴール・4アシストの大活躍を見せており、大岩ジャパンの立ち上げ当初から主力を担ってきた点を考えれば、頼りになりそうだ。

 そして、五輪という大舞台を考えれば、経験豊富な選手も欲しいところ。となれば、オーバーエイジとして守田英正(ベンフィカ)が最適か。アンカーとインサイドハーフに対応でき、A代表での実績も頭ひとつ抜けている。欧州で長年戦ってきた経験値も含め、チームにもたらす影響力は大きいはずだ。

 3選手を挙げたが、このセクションはサイドで選出した三戸と久保もプレーできる。残された枠はあとひとつとして、パリ五輪の出場権獲得に大きく貢献した荒木遼太郎、松木玖生(ともにFC東京)もいるが、山本理仁(シント=トロイデン)を加えたい。
 
 中盤にゲームメーカータイプの人材がいないため、ボールを持つ展開になった時の懐刀として違いを生み出せるはず。また、球際で泥臭く戦えるようになっており、守備面での不安も解消されつつある。ラストピースとして山本をチームに組み込めれば、戦い方の幅も広がるはずだ。

 現状では6月に海外遠征を予定しており、最終選考の場になる見込み。そのタイミングでオーバーエイジの招集も想定されている。18人しか招集できない点を考えれば、メンバー争いは熾烈を極める。最後までパリ行きを巡る争いに注目だ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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