条件変われど、前走ヒヤシンスS1着

2024年4月27日に京都競馬場で開催されたユニコーンSは条件が一新され、東京ダービートライアルに生まれ変わった。初代勝ち馬となったラムジェットはエーピーインディ系特有の荒っぽさが魅力だ。

一新された南関東のダート三冠は色々な問題がある。もちろん、光あれば影あり。メリットがあればデメリットもある。賛否両論は世の常なので、決してバラ色とはいえないし、そんな完璧な制度設計を予め作ることは不可能に近い。ただ、ユニコーンSは施行条件を変え、よくなったのではないかと感じる。

以前は6月の東京ダート1600mで行われていた。ジャパンダートダービーとは間隔も近く、距離条件を踏まえると、別物と考えるのが自然だった。ひとまず3歳ダートの重賞がないので、とりあえずユニコーンSといった感じだった。

今回、京都ダート1900mになり、時期も4月に移り、東京ダービーへのトライアルレースに変わった。ユニコーンSのコンセプトがはっきりしたのはいいことだ。この形を続けていけば、いずれここから大物があらわれるにちがいない。

ダート三冠初年度の今年、羽田盃をアマンテビアンコが勝ち、三冠への権利を獲得した。6月5日の東京ダービーでアマンテビアンコに挑戦状を叩きつけたのは、ラムジェット。旧来のユニコーンSでよくみかけた前走ヒヤシンスS1着馬が勝ったのは不思議だ。

これだけ条件が変わっても、結局ヒヤシンスSの勝ち馬が強かった。これは来年以降、傾向の参考になるかもしれない。東京ダート1600mから京都ダート1900mへ。問われる適性がまったく違う舞台で連勝したラムジェットなら、ナイター競馬の大井2000mでもやってくれるのではないか。


荒っぽいが強いという魅力

レースを先導したのはカゼノランナー。2番人気ムルソーやクロドラバールらは控えたが、全体的に前がかりになった。

キャリアの浅いダート戦では、パワーよりスピードが勝るケースが多く、勝ちあがってくる馬は逃げ、先行で勝ち抜いてきた馬ばかりになる。そのため、3歳ダートのオープン戦はハイペースになることも多い。ユニコーンSも前に比重が置かれ、前半1000m通過推定1.01.5は速かった。

スタートから1コーナー過ぎまでが速く、7.0-10.7-11.8。スピード色の濃い馬たちが先陣争いをしたため、ハイペースになったといえる。そこからは13.1-12.7とペースは落ち着いたが、序盤で突っ込んで入ったため、先行勢が後半ペースを上げられず、じわじわと消耗戦へと変わっていった。

これは1900mという距離も大きい。1800mよりわずかゲートが4コーナーに寄っただけだが、レースはスタミナ重視に流れやすい。スピード優先の3歳ダート戦線において、ここに舞台とのギャップが生じる。

ラムジェットはここまでスピードというより末脚重視の戦歴で、これがこのレースでもプラスに働いた。序盤の速い流れを後方でやり過ごし、ペースが一旦、落ちた時点で外をまくって動いた。絶妙なタイミングであり、鞍上がペースダウンを感じとったからだろう。これは三浦皇成騎手の好プレーだった。中盤以降はペースアップしない流れであり、そこからレースに参戦したラムジェットには余力もあった。

父マジェスティックウォリアーはエーピーインディ系特有のスピード志向をもった中距離型。産駒はJRA重賞5勝のうち、4勝は1800〜1900mだが、逃げ馬プロミストウォリアや追い込みサンライズホープ、スマッシャーと極端な脚質の産駒が強い。当然、成績にムラがあり、強いときは圧倒的でも、負けるときはあっさりといったイメージだ。いかにもエーピーインディであり、シアトルスルーっぽさがある。

ラムジェットの競馬も、外を一気にまくっていく荒っぽさにその血を感じる。3歳限定の現状では3連勝と波に乗っているが、毎回力をきっちり出すタイプになるとは限らないのではないか。

とはいえ、ここまでは三浦皇成騎手が上手くコントロールし、気分よく走らせている。これがハマっているうちは、限定戦なら実力を出してくれるだろう。ムラがあるにせよ、能力の高さは証明された。エーピーインディ系との付き合い方で大切なことは、コースや枠順、馬場といった状況がハマるかどうかの見極めにある。


東京ダービーで面白いサトノエピック

2着サトノエピックは522キロの大型馬で、連勝中の上がり600mは東京ダート2100mで36.9、中山ダート1800m38.9とスタミナを問う上がりがかかる展開で結果を残した。

今回もレース全体の上がり600m38.1と時計を要したことで好走できた。時計面に壁があるのは、地方のダートならマイナスにならない。大井は昨秋、砂を入れ替えてから以前のような速い馬場になるケースは減った。今回は優先出走権を逃したが、東京ダービーに駒を進められればおもしろい。

3着は1番人気ミッキーファイト。こちらはサトノエピックよりさらに大きく、540キロで出走した。その割に器用さも感じるタイプで、時計への対応もある程度ありそうだ。

母系は3代母エアグルーヴだからダイナカール一族。トニービンの血にサンデーサイレンスという構成で、芝で結果を残しても不思議ではないほど。父がドレフォンなのでダートがベストだが、もう少し軽いダートでも好走できる。将来性なら、この馬も負けていない。


2024年ユニコーンS、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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